
日本人は企業も「ホンモノ」の戦略を持つべき時
ずっと日本は戦略がない国家というのが定着していますが、
実は「戦略」という言葉は日本では近年大流行しています。
本屋に行けばおわかりだと思いますが、
孫子はじめ「戦略本」ブームはここ20年続いています。
しかし、あっ、これはホンモノの戦略本だな
というのはほとんどない。そう断言できます。
このサイトやニコニコ動画の生放送番組の
「The Standard Journal」でも、
そして『戦略の階層』においても
さんざん主張してきましたが、やはり日本人に足りないのは、
ホンモノの戦略思考です。
ひどいものでは、
戦術と戦略の区別ができていない本もあります。
だから負けます。
技術も作戦も戦術も、戦略の失敗では取り返せないからです。
戦略とは、抽象化、単純化することだ!
ご存知の通り、文春新書の「中国4.0」が売れています。
なぜなのか?
それは、これまでの戦略本のほとんどが
「ホンモノの戦略」本ではなかったからです。
ルトワックは、近年の中国の変貌ぶりをビシっと
1.0、2.0、3.0と3つの段階で区切って、あまりに明快に解説してくれました。
中国1.0=平和的台頭
中国2.0=対外強硬路線
中国3.0=選択的攻撃
中国の実態については、日本の国内メディアで活躍している
多くの中国分析家(チャイナウォッチャー)が
ルトワックが指摘しているような変化を
掴み切れていなかったので、
当然、そのTVや新聞報道を観ていた日本人は
言うまでもありません。
(少なくとも、「強硬になってきたな」という指摘はありましたが、
そのあと「選択的になった」という指摘はありませんね)
中国のGDP推移や諸外国との問題などの分析はありましたが、
それらはすべて「戦術的」な分析にとどまり、
「戦略的」な分析をしてこなかったのです。
日本の問題の9割は中国問題
経済問題も軍事問題も資源問題も環境問題もすべて、
21世紀の日本の問題の9割は中国にあります。
「9割」とは多すぎると感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、
中国問題は即、アメリカ問題だからです。
ルトワックの指摘でいうと、
日本は独自解決力をもたない国であり、
ミドルパワーであって、大国ではありません。
そのため、日本を挟む「大国」が中国とアメリカである以上、
日本はアメリカと組むしかありません。
中国問題は、同時にアメリカ問題でもあります。
中国一国で問題が解消せず、
米国の協力ではじめてこの問題が解けるのです。
しかしやっかいなことに、米国には、自由な選択権があります。
そのため日本にとって致命的に重要なのは、
米国をいかに巻き込んで中国問題を解消していくかなのです。
そこが決まれば、他の周辺国、
たとえば韓国などもそれに従うしかないのです。
ルトワックは東アジアの状況をこのようにシンプルに捉え、
誰もがわかりやすく理解できる構図にして見せてくれました。
それなのに日本の報道では、「アジア諸国の反発」だとか、
「国連を中心とした平和主義」だとか、「米国一辺倒外交をやめよう」とか、
まったく戦略思考のかけらもない凡庸な報道が繰り返されています。