
さて、最初にこの本は歴史の「波」について振り返ったもの、
と言いましたが、
歴史の波といえば、地政学の分野では
ロシアの経済学者であるコンドラチェフが提唱したとされる
「コンドラチェフの波」というのが有名なところですが、
これは70年ほどのサイクルで
景気の上下があることを経済史から振り返ったもの、
ということになるでしょう。
コンサル業を営む原著者のハウとストラウスは、
すべての人類の歴史において、
20年ごとに移り変わる「世代」(ジェネレーションズ)が存在し、
その集団が人生の段階を移り変わるときに、
世の中の様相もそれまでのものと大きく変化する、
としております。
アメリカの考えというのは、フランシス・フクヤマの
「歴史の終わり」という論文からもわかるように、
どちらかといえば歴史が一つの方向に向かって進む
というイメージを持つものが多いわけですが、
このハウとストラウスはそのような考えは特殊であり、
実は古代ギリシャ・ローマの時代から、
人類は歴史が繰り返すことを知っていた、
というところから話を始めるのです。
これを彼は「循環史観」と名付け、
西洋の一般的な「線的史観」とわけて考えつつ、
イギリスとアメリカの歴史は、20年ごとの節目の春夏秋冬があり、
その4つの季節で1セットとなる、
およそ80年から85年ごとのまとまり(サエクラム)を繰り返している、
というのです。
このような
「20年×4世代(春夏秋冬)=1サイクラム:約80年」
という公式を元にして、それをなんと
薔薇戦争の時代から現在(1997年)までの
すべての期間や事件などにそれぞれ当てはめて、
各世代やその時代の雰囲気に名前を付けて、
それらを表などにしてまとめているという点なのです。
まず最初に私が感心したのは、一つの「世代」が形成されるとき、
彼らが最初に生まれ育った時代(0~20歳)までの雰囲気に
大きな影響を受ける、としていることです。
具体的にいうと、私は1970年代生まれなので、
私が成人するまでの80年代から90年代の時代の雰囲気、
つまりバブルからその崩壊の頃の時代背景
というものを身に着けているということです。
そして私のような人物が成人してから
中年になるまで(20~40歳)を見ると、
若い時にはバブル崩壊後の就職氷河期、
そしてそのまま「失われた20年」を過ごすことになります。
このような時期を過ごしてきた私たちの世代は、
全体的な傾向として、他の世代たちよりも
サバイバルの技術を身につけていることが多く、
世界に対してもリアリスティックに対処する傾向を持つ、
と指摘されております。
私の世代は、日本では「団塊ジュニア」や
「新人類」「ロス・ジェネ」「バブル世代」などと言われるわけですが、
原著者たちはアメリカの同世代を
「ジェネレーションX」や「第13代」
という呼称で呼んだりしておりまして、
この世代を主に1964年から84年までに生まれた人々である、
と定義しております。
この本によりますと、この世代と似たような特徴を持った世代は、
われわれの1サエクルム前、つまり1886年から1908年までに生まれた
祖父の代に出現していたというのです。
しかも面白いことに、われわれとその1サエクルム前の世代、
さらにその1サエクルム前の世代に、
ハウとストラウスは共通の名前を付けております。
それが「遊牧民」(Nomad)というもの。
これをハウとストラウスたちは、
私を含む世代たちの共通の呼称として使っているのです。
参考までにその前後の世代をそれぞれ述べておきますが、
世代の並びというのは人類史を通じてそのほとんどが、
預言者→遊牧民→英雄→芸術家