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地政学を英国で学んだ
しばらくお待ち下さい。
2012年04月01日 自滅するアメリカ帝国~日本よ、独立せよ~(その2)

アメ通読者の皆様、おはようございます。
管理人です。

本日の関東地方は昨日の"春の嵐"とうって変わって
気持ち良く晴れましたね。ちょっと寒いですが...

さてさて、以前、ご紹介した伊藤貫さんの最新著書は
お読み頂けましたでしょうか。

前回はご紹介出来なかったのですが、
管理人がどうしても皆様とシェアしたかったお話がありますので、
今回も、伊藤さんのご著書より引用してご紹介致します。

▼『自滅するアメリカ帝国―日本よ、独立せよ』
 (文春新書): 伊藤 貫
 http://goo.gl/fLfpA

(P165より引用はじめ)

■日本の「価値観外交」の愚かさ

ちなみに、この「国際構造が多極化していけば、
日本には独立した外交能力と国防能力が必要となる。
同盟関係の多角化も必要となる」
というロジックは、政治的なイデオロギーや
歴史解釈の視点とは無関係のものである。

日本の一九三一〜四五年の戦争を、
「あれは正しい戦争であった、侵略戦争ではなかった」
と考える方にとっても、
「悪い戦争だった、侵略だった」
と考える方にとっても、
「国際構造が多極化し、アメリカ覇権の相対的な衰退が続くならば、
日本には自主防衛能力が必要となる」というロジックは同じだからである。
過去五百年間の国際政治を動かしてきたバランス・オブ・パワーの原理に
適切に対応する外交・国防政策とは、
政治的なイデオロギーや歴史解釈の視点とは別のものである。

筆者自身は、戦前の日本の四つの政策――日韓併合、対中二十一箇条要求、
満州の植民地化、一九二七年以降の日中戦争―― に関して、
「あれは日本にとって不必要な行為であった」という歴史観の持ち主である。
筆者は、アメリカが日本に押し付けてきた「東京裁判史観」と、
日本の民族派や皇国派の主張してきた「大東亜戦争=アジア解放戦争史観」の、
双方に賛成していない。

しかし筆者が、戦前の日本の勢力圏拡張政策に関して、
「過剰な拡張政策であった。やり過ぎであった。
当時の日本の指導者たちは、日本を包囲する三覇権国(米中露)との
バランス・オブ・パワー戦略に失敗していた」と考えることと、
「二一十一世紀の日本には、ミニマム・ディテランス
(必要最小限の自主的な核抑止力)を含む自主防衛能力が必要だ」
と考えることには、何の矛盾もない。
外交と国防においてバランス・オブ・パワーの維持を最も重視する
リアリスト派の立場からは、「戦前の日本の過剰な拡張政策と、
現在の日本のように、核武装国に包囲されているのに
ミニマム・ディテランスすら構築しようとしない過小な国防政策は、
両方ともバランス・オブ・パワーの維持に失敗している国策である」
と考えられるからである。

過去五百年間の国際政治に見られたバランス・オブ・パワーとは、
政治イデオロギーや歴史解釈論争とは、まったく別のパラダイムである。
読者の方々が自由主義者であろうが
保守主義者であろうが共産主義者であろうが
――もしくは天皇主権制の復活論者であろうが、
ポスト・モダン的な天皇制廃止論者であろうが――
そのような政治思想にかかわりなく、
「国家の生存と独立を守るためには、バランス・オブ・パワーを維持すべきである」
というロジックに変わりはないのである。
したがって最近の日本の親米保守派のように、
外交政策と国防政策に政治イデオロギーを持ち込んで
「日米の価値観外交」を主張するのは愚かである。
アメリカの政治屋さんたちは「価値観を共有する日本人」を守るために、
核武装した中朝露と核戦争してくれるわけではないからである。

歴史上の人物、例えば英国首相であったピット、パーマストン、チャーチル、
メッテルニヒ(換)、ビスマルク(独)、伊藤博文、
ドゴール、スターリン、ケナン、アイゼンハワー、周恩来等は、
その政治イデオロギーにかかわりなく、
バランス・オブ・パワー政策の重要性を理解していた。
彼らが外交政策において自国の国益を
維持・増強することに成功したのは、そのためである。

その一方、ナポレオン、グラッドストン(英)、
ヴィルヘルムニ世(独)、ウィルソン、ヒトラー、
近衛文麿、東条英機、
ケネディ、カーター、ブッシュ(息子)等は、
バランス・オブ・パワー維持の重要性を理解していなかった。
彼らの外交・軍事政策が
自国の国益にダメージを与えたのは、そのためである。
バランス・オブ・パワーの維持とは、
政治イデオロギーや歴史解釈の視点にかかわりなく
維持されるべき国策原則なのである。

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▼『自滅するアメリカ帝国―日本よ、独立せよ』
 (文春新書): 伊藤 貫
 http://goo.gl/z5Nz8
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繰り返しになってしまいますが、
この伊藤さんの著書、まだお読みでない方は、ぜひぜひお読み下さい。
「アメ通」読者の皆様の知的琴線を揺さぶることは保障致します。

それでは、本日も良き休日をお過ごし下さい。

(管理人)

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さて、早速ですが、・ネオコンをはじめとする勢力が狙ってきた米国の世界一極覇権支配は、長くは続かない。・中国が膨張し、アジアの覇権をねらい、世界は多極構造になる。 90年代から上記のように予想し、米国内でも論争してきたのがリアリスト学派です。

リアリスト学派は、国家のパワー(軍事力、政治力、人口規模、経済力等)がもっとも大事な要素と考え、

正義やイデオロギー、理念は関係ない。国際関係はパワーで決まり、パワーを予測し戦略を立てよう

と考える学派で、19世紀の英国の行ったバランス・オブ・パワーを活用した大戦略を信条とします。

ところが「リアリスト」を自認する日本の親米保守派は、
「経済中心主義」で「安保無料(だだ)乗り」をし続けていますが、
実は、彼らは、以下の2点で決定的、かつ、致命的な誤りを犯していたのです。
そして、そうした日本の政策は、冷酷な米国のリアリストから、
単なる「バンドワゴニング」に過ぎない、と足元を見透かされているのです。

その2点とは、

(1)日本はアングロサクソン(米英)についていれば大丈夫。

(2)米国は「民主制度」と「法治」、「人権」を重んずる日本を信頼し、
   一党独裁の共産主義中国を嫌っている。

ということです。

まず、(1)については、
日英同盟時も上手くいった。だから、これからも米国についてゆけば大丈夫!
万事問題ないというものです。

しかし、我が日本が戦後60年間、幸いにして戦争に巻き込まれなかったのは、
ほとんど偶然の産物であったということは、強く認識しておく必要があります。

米国は国益に係わることならば、いとも簡単に「友達」を切り捨て、裏切る国である。
国論が変われば友好国をあっさり切り捨ててきたことは、これまでの歴史の事実が証明しています。

・日中戦争では、蒋介石を応援しつつも、途中から毛沢東支援にまわった。

・ソ連打倒のためには台湾(中華民国)を切り捨て、中華人民共和国と国交を結んだ。

・ベトナム戦争では出口がみえなくなり、結局南ベトナム支援からあっさり撤退した。

・米国が支援していた南ベトナムは崩壊し、大量の難民があふれ出た。

・イラン・イラク戦争の時、イランが戦争に勝って影響力が拡大することを恐れた米国は、
 サダムフセインに(イラク)に軍事的な支援をした。
 しかし、支援した米国は干渉してこないと思ったフセインは、その後クウェートに侵攻し、
 湾岸戦争、イラク侵攻と2度の戦争で米国に打ちのめされ、最後は米軍に捕まり処刑された。

如何でしょうか?

これでもまだあなたは、アメリカはずっと「友達」でいてくれる!

と思えますか?

次に、(2)についてですが、
欧米メディアなどの報道によれば、米国内における中国の工作員の数は激増しています。
更には、人民解放軍には「政治工作条例」なるものまであります。
彼らは世論戦、心理戦、法律戦からなる「三戦」の任務を与えられ、
まさに今、中国は国策として、米国内で「世論戦」を仕掛けている、というのが冷酷な事実です。

正義や真実でなく、ウソでも現実をつくれると考える中国の
カネも人員もかけたまさに「人海戦術」的な、この国家戦略が功を奏し、
すでに米国世論では「尖閣は日本が強奪した島だ」ということに傾き始めている・・・
この危険な状況を皆さんはご存知でしょうか?

-*- -*-

例えば、韓国との従軍慰安婦問題をみるまでもなく、
日本国内で、いわゆる「保守派」といわれる人達が、
どれだけ「真実」を主張しても、
同じ日本人であるはずの国内左翼勢力がこの外患に呼応するという、
典型的なパターンに陥っている事例は、枚挙に暇がありません。

白州次郎は「日本をプリンシプルのない国」と言いました。
しかし、残念ながら、この分析は現在の日本にも今だに当てはまっているのです。

これらの冷酷な事実を踏まえ、
本サイトで皆さんとともに真剣に考えていきたいのは、以下の2点です。

・日本はいかにして「パワー」を獲得すればいいのか?

・どんな国家像を描き、グランド・ストラテジーを立てればよいのか?

この二つの質問を念頭に据えて、米国のリアリスト思考を学び、
日本におけるリアリスト思考を広げ、リアリスト学派をつくっていく。

これが、このサイト、www.realist.jpの目的です。
あなたも是非議論に加わって下さい。



リアリスト思考を最初に日本にもたらした、
シカゴ学派、元フーバー研究所上席研究員、故・片岡鉄哉先生に捧ぐ

日本がこのままの状態でいけば、
少なくとも十年以内に、二流、三流の地位まで確実に堕ちていくことになる。
現在の日本の状況を冷静に見れば、
どう考えてもそういう結論しか出てこないのだ。
しかし、日本はそのまま堕ちっぱなしというわけではない。

何年後になるかわからないが、日本はしぶとく復活するはずである。
国家というのはいつまでも堕ちっぱなしということはなく、
反省して自覚した国民が生まれ、それが国を復興することになるからである。

そのときに、決定的に必要となつてくるのが「理想」である。

地政学の祖であるマッキンダーは、
「人類を導くことができるのは、ただ理想の持つ魅力だけだ」
と言っている。

しかし彼は、同時に現実を冷静に見る目を
忘れてはならないことを鋭く警告している。
それが地理と歴史を冷静に分析した、
地政学という学問が与えてくれる視点なのである。
彼が一九一九年に発表した『デモクラシーの理想と現実』
という本の題名は、このような理想と現実のバランスの大切さを訴えている。

世界はこれから「カオス化」していく。
これはつまり、世界はこれからますます複雑化した
先の見えない場になるということである。

そして日本は、「カオス化」された状況の中で
自立を目指さなければならないし、
むしろ自立せざるを得ない状況に追い込まれることになるかもしれない。
そして、その中で世界に伍していくためには、
日本人は何よりもまず、リアリズムの思考法を身につけなければならない。

日本人は自分で責任を持って戦略を考えるという思考を捨ててしまい、
安易に平和的な解決だけを求めるという体質が染みついてしまった。
たとえば、外交における戦略も「善か悪か」で判断するため、
善を探そうとするあまり、次の一手がどうしても遅くなる。

しかも、日本が「善かれ」と思って世界に主張したことは、
まずもって善として見られていない。
他国はリアリズムの視点で「日本が何を狙っているのか」
と冷酷に見ているのだ。
だからこそ、わが国も外交戦略を「善悪」ではなく、
「強弱」で見るように訓練しなければならない。
「強弱」とは、現在わが国にとって、
この政策は他国と比べて立場を強めてくれるのか
弱めるものかという冷静な判断である。

弱いのであれば、より強い政策を打ち出さなければならないし、
強いものであれば、政策をより国益に近づけなければならない。
こうしたリアリズムの思考を身につけることは、
むしろ「国際的なマナー」なのである。