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地政学を英国で学んだ
しばらくお待ち下さい。
2012年05月04日 太平洋侵出を狙う中国の「悪の論理」

読者の皆さま、おはようございます。
「アメ通」管理人です。

GWも後半戦に突入しましたが、関東地方は本日も微妙な天候ですね...。
週末はスッキリ晴れてくれると良いのですが・・・

さて、今回も管理人から、皆さまとシェアしたいお話がありまして、
「管理人号」として配信させて頂いております。

唐突ですが、管理人が橋下大阪市長の事を注目している、
ということは、以前の「編集後記」にても少々お話致しましたが、
最近、再びネットの一部で橋下市長にまつわるトピックが話題になっております。

▼大阪維新の会: "家庭教育支援条例案"が、
驚愕以前にツッコミどころ満載...な件 - Togetter
 http://togetter.com/li/297254

▼橋下市長「発達障害の原因は愛情欠如ではない」- Togetter
 http://togetter.com/li/297826

上記2つの「まとめ」はかなり文量が多いので、
ご興味ある方はじっくりご覧になって頂くとして、
とにかく、橋下市長が次々と物議を醸す「燃料」を
投下してくれていることは間違いないですね。(笑)

そして、少し前に同じように話題になったのが、
「君が代」の起立斉唱「強制」問題。

実は、管理人的には、この「強制」ということに
ちょっとした違和感があります。
そもそも「強制」しなければならない状況そのものが
どこかおかしいのではないか?と思います。

管理人自身は、「君が代」を"普通に"口ずさみますが、
もちろん、誰かに強制されているわけではありません。
ごく自然に日本の国歌に対して親しみを抱くからです。
更に言えば、日本という「国柄」に親近感を抱いている
とも言えるのかもしれません。
どうして、そんな「親近感」があるのか?と言えば、
大上段に構えた大袈裟な話ではなく、ただ素朴に、
「日本とか、日本人ってけっこうカッコイイじゃん!」
と思っているからだろうと、
こうして書いてきて、改めて思いました。(笑)

管理人が「日本って素敵!」と想うのに、
大きな影響を与えて続けて頂いているメルマガを、
「アメ通」読者の皆さまにもぜひオススメしたいと思います。

それは・・・

▼Japan on the Globe-国際派日本人養成講座
 http://www.mag2.com/m/0000000699.html

になります。

人気メルマガなので、
既に購読している方もたくさんいると思いますが、
管理人も長年愛読しておりまして、
毎週日曜朝の楽しみになっております。
※「報道◯◯◯1」でも「◯ンデープロ◯ェクト」でもありません。(笑)

お読みになっている方ならばお分かりかと思いますが、
毎週あれだけのクオリティのテキストを発行し続けている
発行者:伊勢様の見識と志にはいつも啓発されます。
このメルマガを読んでいると、時事的トピックのみならず、
「かつても今も、なんて素敵な日本人がいるんだ!」
と自然と力が湧いてきます。

「アメ通」本文では、どうしても日本に対して
厳しい指摘ばかりになってしまいますが、
それは、このメルマガ「国際派日本人養成講座」が紹介しているような、
多くの素晴らしいエピソードが端的に示しているように、
日本人には本来それだけの資質が備わっているにもかかわらず、
最近、それがすっかり鈍ってしまっているからなのです。

で、実は...
「アメ通」主筆のおくやまさんの著書が、
既にこの「国際派日本人養成講座」にて紹介されているのです!
今回はそれをご紹介させて頂きます。

もし、「アメ通」読者の方で、
▼Japan on the Globe-国際派日本人養成講座
 http://www.mag2.com/m/0000000699.html
を、お読みでない方がいらっしゃいましたら、
これを機にメルマガ登録をされてみては如何でしょうか?

(転載はじめ)

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■ Japan On the Globe(641) ■ 国際派日本人養成講座 ■
  The Globe Now: 太平洋侵出を狙う中国の「悪の論理」
米中で太平洋を分割管理する構想を中国はアメリカに提案した。
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■1.太平洋の米中「分割管理」構想

 米紙『ワシントン・タイムズ』は米軍関係者の話として、2007(平成19)5月にアメリカ太平洋軍のキーティング司令官が中国を訪問した際、会談した中国海軍幹部から、「ハワイを基点として米中が太平洋の東西を『分割管理』する構想を提案された」と報じた。

 中国海軍の幹部は「われわれ(中国)が航空母艦を保有した場合」として、ハワイ以東をアメリカが、ハワイ以西を中国が管理することで「合意を図れないか」と打診したそうだ。

 アメリカ側は中国の提案を拒絶したとしているが、同紙は情報機関を含むアメリカ政府の親中派内で、この提案に前向きな姿勢を示す向きもあったと報道している。

 この中国の提案、それに対するアメリカ側での一部の賛同も、「地政学」と呼ばれる分野の研究に基づけば「さもありなん」と理解できる。世界各国の外交・国防戦略は、おおむね地政学の常識に基づいているからだ。

 そして我が国の外交・国防の常識が「世界の非常識」になりがちなのも、戦後、アメリカに地政学の研究を禁じられ、忘れ去ってしまったからである。

 日本が世界に伍してやっていくためには、地政学を学ぶしかない、として、イギリスのレディング大学大学院で地政学を研究している奥山真司氏が最近、刊行したのが『"悪の論理で"世界は動く!』[1]である。今回は、この本に基づいて、特に中国の動きを考えてみたい。


■2.ランドパワーの海洋侵出

「地政学」とは、国際政治を世界各国の生存競争の場ととらえ、各国の戦略と行動を地理的要因から考察する学問である。

 地政学の生みの親の一人、米国海軍大学学長のアルフレッド・マハンは、「人類の歴史はランドパワー(陸上勢力)とシーパワー(海上勢力)の闘争の歴史である」という世界観を提唱した。[a]

 ランドパワーはユーラシア大陸の内部から冨を求めて海に出ようとし、沿岸部でシーパワーとぶつかり合う。ランドパワーとシーパワーの代表例が冷戦時代のソ連とアメリカである。東西ヨーロッパ、アフガニスタン、ベトナム、朝鮮などユーラシア大陸の沿岸部で冷戦や熱戦が展開された。

 社会主義体制の行き詰まりによってソ連が崩壊すると、次のランドパワーとして台頭したのが中国である。中国の沿岸部は急速な経済発展を遂げ、各種資源・エネルギーの輸入と商品の生産・輸出に、中国経済の生命線となっている。東シナ海と南シナ海を「内海」にできれば、中国にとってこれほど安心なことはない。

 しかし、中国の海洋侵出を妨げているのが、九州から沖縄、台湾、フィリピン、ボルネオ島と続く列島群である。このラインは、米国を盟主とするシーパワー陣営の勢力範囲であり、特に沖縄の米軍と台湾軍は、まさに中国にとって「目の上のたんこぶ」なのである。

 中国海軍はフィリピンから米軍が撤退した途端に、南シナ海に軍事基地を作った。後ろ盾を失ったフィリピンの抗議など、どこ吹く風である。そして、次に狙っているのが台湾と尖閣列島、そして沖縄である。[b]


■3.「第一列島線」から「第二列島線」へ

 上述の九州から沖縄、台湾、フィリピン、ボルネオに至るラインを、中国は自国の勢力範囲の「第一列島線」として捉え、その内側で海軍を活発に展開している。

 2020年には、伊豆諸島、グアム、サイパン、パプアニューギニアと続く「第二列島線」までを勢力圏とし、米海軍に対抗できる海軍の建設を目論んでいる。その一環として2隻の中型空母を建造しており、2012年までの実戦配備を目指している。

 冒頭の、ハワイを基点に太平洋を米中で分割しようという中国海軍幹部の提案は、一個人の思いつきなどというものではなく、海洋侵出を狙うランドパワー中国の国家意志なのである。

 第2列島線までが「中国の海」になれば、日本列島はその中にすっぽり入ってしまう。別に日本を軍事占領する必要はない。日本のシーレーンを抑え、中国の意のままになる傀儡政権を作って、日本の冨と技術を自由に搾取できれば、それで良い。

 日本の経済力と技術力が自在に使えるようになったら、米海軍と渡り合える海軍建設も現実となるだろう。


■4.中国の太平洋侵出の鍵は沖縄

 太平洋侵出を狙う中国にとって最大の突破口が台湾と沖縄である。特に沖縄の強力な米軍基地によって、中国海軍は第一列島線の内側に閉じ込められている。もし米軍を沖縄から追い出すことができれば、第二列島線への侵出が容易になる。

 そもそも中国は沖縄を日本固有の領土とは考えていない。2005(平成17)年8月1日の中国誌『世界知識』は、「沖縄が日本の領土になったのは琉球王国に対する侵略の結果であり、第二次大戦後のアメリカからの返還も国際法上の根拠を欠き、『主権の帰属は未確定』だ」とする北京大学教授の論文を掲載した。一研究者の論文という形でアドバルーンを上げ、周囲の反応を見る、という中国がよく使う手である。

 確かに江戸時代に沖縄は、琉球王国として日本と清国の両方に服属する形をとっていた。しかし、明治27(1894)年の日清戦争後の談判で、清国は琉球を日本領として認め、以後、1世紀以上も沖縄は日本の正式な領土として国際的にも認められてきた。

 沖縄の帰属に疑義を挟むなら、第2次大戦後に中国が侵略したチベット[d,e]、ウィグル[f]の方がはるかに「未確定」のはずだが、こちらは頬被りして、自国に都合の良い所だけ主張するのは、中国外交の通例である。

 いずれにせよ地政学的に見れば、第二列島線への拡張のために、台湾と沖縄を勢力圏に収めなければならない、というのが、中国にとって必然的な戦略なのである。


■5.沖縄を「独立」させ、傀儡政権を作る

 しかし、チベットやウイグルのように軍事占領して自国領に組み入れるというのは、前時代的なアプローチであり、民族独立意識の高まった現代においては、国際社会からの反発や住民の抵抗などでリスクが大きい。

 それよりも、中国にとって現実的なアプローチは、沖縄を日本から独立させて傀儡政権を樹立するというシナリオである、と奥山氏は推論している。[1,p130]

__________
 仮に中国が本気で独立を画策するとしたら、第一弾として、沖縄の企業や土地などに投資をしてくるだろう。次に、中国系の資本を進出させ、経済を握る。すると、中国人がたくさん定住するようになり、二世が生まれると彼らは日本国籍を取得できる。当然、投票もできるし、立候補もできる。

 そこで、華人系の議員を擁立して議会を掌握し、経済と政治を握ってゆくゆくは独立を図るという寸法である。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

■6.沖縄の「自立・独立」

 このシナリオに見事に合致したビジョンを公表しているのが民主党である。同党が平成17(2005)年8月に改訂した「沖縄ビジョン」では、次のような提言をしている。[1,p141, 2]

・沖縄において「自立・独立」型経済を作り上げる
・「一国二制度」を取り入れ、「東アジア」の拠点の一つとなる
・在沖縄米軍基地の大幅縮小
・東アジアと全県自由貿易地域(フリー・トレード・ゾーン)構想
・地域通貨の発行
・アジア地域における人的交流の促進

「独立」とは「日本からの独立」という意味ではない、とわざわざ断っているが、一国二制度、フリー・トレード・ゾーン、地域通貨とくれば、「経済的独立」そのものである。

 これに民主党政権が主張している在日外国人の地方参政権、米軍基地の県外移転が実現すれば、「政治的独立」もぐっと近づく。こういう背景から見れば、民主党が「在日中国人も含めた外国人の地方参政権」という一般国民には不可解な政策を強引に進めようとしている理由もよく分かる。

 民主党が、中国に洗脳されたお人好しなのか、中国の意図を知ったうえで協力している確信犯なのか、は不明であるが、その政策が、中国の太平洋侵出の戦略と見事に符合しているのは事実である。

 このような民主党がある限り、万一、中国が沖縄に傀儡政権を作ることになっても、その人材には事欠かないだろう。


■7.アメリカも第二列島線への後退

 一方、シーパワー・アメリカは、強大化しつつある中国の太平洋侵出に、どう対処しようとしているのか。

 アメリカが世界ダントツのスーパーパワーであった時代は過ぎ、勢力圏を縮小しながら自国の権益を守る、という戦略に移行しつつある。いまだ軍事力こそ強いが、それを支える経済力において、長年の財政と貿易の双子の赤字で、日本や中国に大量の国債を買って貰って、やっと国が保てるという依存体質になってしまっている。

 すでにフィリピンのスービック基地は撤退し、韓国軍の有事統制下指揮権も2012年に韓国政府に返還する。沖縄の米軍基地も段階的に縮小し、極東の軍隊はグアムに集約するという構想を立てている[1,p150]。すなわち、アメリカ側も第二列島線への後退を考えているのである。

 中国は、こうしたアメリカの後退姿勢を読んでいるからこそ、冒頭に紹介した太平洋の米中分割構想を臆面もなく提案してくるのである。


■8.日本のとりうる選択肢は3つ

 中国が太平洋に向かって勢力を伸ばそうとし、アメリカが後退しつつある、という現実の中で、我が国はどうすべきなのか。奥山氏は地政学的に見て、日本のとりうる選択肢は以下の3つしかない、と指摘する。[1,p193]

 第一は「アメリカとの同盟関係を継続する」という選択である。後退しつつあるアメリカの軍事力を補うには、今以上の自主防衛努力が必要である。また、アメリカの経済的弱体化を支えるために、すでに200兆円も買ったアメリカ国債を今後も買い続けなければならない。

 これでは日本の経済力も衰退していくだろうから、落ちぶれた老友同士で支え合っていくという構図になる。しかし、アメリカの方が借金を踏み倒して、去っていくという可能性は捨てきれない。

 第二は「中国の属国になる」という選択肢である。「いまでさえ日本はアメリカの子分なのであり、純粋な独立国ではない。親分がアメリカから中国に変わるだけで、今とたいして変わらない」という楽観的な見方がある。

 しかし、独裁国家中国は、政府批判をしただけで投獄するような国である。その属国となれば、今の民主党内の小沢独裁のような状況が日本全体を覆うだろう。また脱税・賄賂は日常茶飯事という国柄でもあるから、その属国になれば、鳩山政権のような巨額脱税や違法献金、国費の使い込みなどが国全体に広まるだろう。

 その上に、今の中国の反日歴史教育を当然、属国にも要求してくるだろうから、今後の日本人はすべて前科者として洗脳されていくことになる。中国の属国となって幸せになるのは、傀儡政権と与党党員という特権階級だけだろう。


■9.第三の選択肢「日本独立」

 奥山氏の指摘する第三の選択は「日本独立」である。アメリカや中国に従う子分ではなく、国際社会の中で主体的に動く国になることである。

「独立」といっても「孤立」ではない。地政学的に見れば、ユーラシア沿岸部の国々と同盟関係を結んでランドパワーに対抗するという手がある。日本と同じく中国の脅威にさらされている台湾、東南アジア、オーストラリア、さらにインドなどとの広範な同盟関係を結ぶ。

 もう一つは、「敵の中に味方を作る」戦略である。チベット、ウイグルなどの独立運動を手助けしつつ、北京に対抗する上海や広東省を味方につける。中国がソ連の分裂崩壊の道を辿らない、という保証はない。

 中国の経済成長が著しいとは言え、その国民総生産の総額はいまだ日本と同程度の規模で、それで日本の10倍以上の人口を養わなければならない。しかも国内に独立運動、地域間対立、階級対立を抱えている。人権と自由を求める声も強い。

 そんな中国に脅かされていると言っても、幕末に西洋列強が押し寄せる中で見事に国家の独立を貫いた明治日本に比べれば、平成日本ははるかに恵まれた立場にあると言える。

 足りないのは、国際社会の中で独り立ちしてやっていこうという国民の意志と、地政学的な戦略眼だろう。

(文責:伊勢雅臣)


■リンク■

a. JOG(314) ランドパワーとシーパワー
 日本の生きる道は、シーパワー(海洋国家)諸国との「環太平洋連合」にある。

b. JOG(152) 今日の南沙は明日の尖閣
 米軍がフィリッピンから引き揚げた途端に、中国は南沙諸島の軍事基地化を加速した。

c. JOG(481) 中国、太平洋侵出の野望 ~ 西太平洋を「中国の海」に
 日本を「中国の海」に浮かぶ孤島列島にするのか。

d. JOG(123) チベット・ホロコースト50年(上)~アデの悲しみ~
 平穏な生活を送っていたチベット国民に、突如、中共軍が侵略を始めた

e. JOG(124) チベット・ホロコースト50年(下)~ダライ・ラマ法王の祈り~
 アデは27年間、収容所に入れられ、故郷の文化も自然も収奪された

f. JOG(523) シルクロードに降り注ぐ「死の灰」
 中国に植民地支配されたウイグル人の土地に、核実験の死の灰が降り注ぐ。


■参考■(お勧め度、★★★★:必読~★:専門家向け)
  →アドレスをクリックすると、本の紹介画面に飛びます。

1. 奥山信司『"悪の論理"で世界は動く!
 地政学・日本属国化を狙う中国、捨てる米国』★★★、
フォレスト出版、H22

2. 『民主党沖縄ビジョン【改訂】』

(転載おわり)

(「アメ通」管理人)

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このサイトはリアリズムについて学ぶ人を増やすためのサイトです。

さて、早速ですが、・ネオコンをはじめとする勢力が狙ってきた米国の世界一極覇権支配は、長くは続かない。・中国が膨張し、アジアの覇権をねらい、世界は多極構造になる。 90年代から上記のように予想し、米国内でも論争してきたのがリアリスト学派です。

リアリスト学派は、国家のパワー(軍事力、政治力、人口規模、経済力等)がもっとも大事な要素と考え、

正義やイデオロギー、理念は関係ない。国際関係はパワーで決まり、パワーを予測し戦略を立てよう

と考える学派で、19世紀の英国の行ったバランス・オブ・パワーを活用した大戦略を信条とします。

ところが「リアリスト」を自認する日本の親米保守派は、
「経済中心主義」で「安保無料(だだ)乗り」をし続けていますが、
実は、彼らは、以下の2点で決定的、かつ、致命的な誤りを犯していたのです。
そして、そうした日本の政策は、冷酷な米国のリアリストから、
単なる「バンドワゴニング」に過ぎない、と足元を見透かされているのです。

その2点とは、

(1)日本はアングロサクソン(米英)についていれば大丈夫。

(2)米国は「民主制度」と「法治」、「人権」を重んずる日本を信頼し、
   一党独裁の共産主義中国を嫌っている。

ということです。

まず、(1)については、
日英同盟時も上手くいった。だから、これからも米国についてゆけば大丈夫!
万事問題ないというものです。

しかし、我が日本が戦後60年間、幸いにして戦争に巻き込まれなかったのは、
ほとんど偶然の産物であったということは、強く認識しておく必要があります。

米国は国益に係わることならば、いとも簡単に「友達」を切り捨て、裏切る国である。
国論が変われば友好国をあっさり切り捨ててきたことは、これまでの歴史の事実が証明しています。

・日中戦争では、蒋介石を応援しつつも、途中から毛沢東支援にまわった。

・ソ連打倒のためには台湾(中華民国)を切り捨て、中華人民共和国と国交を結んだ。

・ベトナム戦争では出口がみえなくなり、結局南ベトナム支援からあっさり撤退した。

・米国が支援していた南ベトナムは崩壊し、大量の難民があふれ出た。

・イラン・イラク戦争の時、イランが戦争に勝って影響力が拡大することを恐れた米国は、
 サダムフセインに(イラク)に軍事的な支援をした。
 しかし、支援した米国は干渉してこないと思ったフセインは、その後クウェートに侵攻し、
 湾岸戦争、イラク侵攻と2度の戦争で米国に打ちのめされ、最後は米軍に捕まり処刑された。

如何でしょうか?

これでもまだあなたは、アメリカはずっと「友達」でいてくれる!

と思えますか?

次に、(2)についてですが、
欧米メディアなどの報道によれば、米国内における中国の工作員の数は激増しています。
更には、人民解放軍には「政治工作条例」なるものまであります。
彼らは世論戦、心理戦、法律戦からなる「三戦」の任務を与えられ、
まさに今、中国は国策として、米国内で「世論戦」を仕掛けている、というのが冷酷な事実です。

正義や真実でなく、ウソでも現実をつくれると考える中国の
カネも人員もかけたまさに「人海戦術」的な、この国家戦略が功を奏し、
すでに米国世論では「尖閣は日本が強奪した島だ」ということに傾き始めている・・・
この危険な状況を皆さんはご存知でしょうか?

-*- -*-

例えば、韓国との従軍慰安婦問題をみるまでもなく、
日本国内で、いわゆる「保守派」といわれる人達が、
どれだけ「真実」を主張しても、
同じ日本人であるはずの国内左翼勢力がこの外患に呼応するという、
典型的なパターンに陥っている事例は、枚挙に暇がありません。

白州次郎は「日本をプリンシプルのない国」と言いました。
しかし、残念ながら、この分析は現在の日本にも今だに当てはまっているのです。

これらの冷酷な事実を踏まえ、
本サイトで皆さんとともに真剣に考えていきたいのは、以下の2点です。

・日本はいかにして「パワー」を獲得すればいいのか?

・どんな国家像を描き、グランド・ストラテジーを立てればよいのか?

この二つの質問を念頭に据えて、米国のリアリスト思考を学び、
日本におけるリアリスト思考を広げ、リアリスト学派をつくっていく。

これが、このサイト、www.realist.jpの目的です。
あなたも是非議論に加わって下さい。



リアリスト思考を最初に日本にもたらした、
シカゴ学派、元フーバー研究所上席研究員、故・片岡鉄哉先生に捧ぐ

日本がこのままの状態でいけば、
少なくとも十年以内に、二流、三流の地位まで確実に堕ちていくことになる。
現在の日本の状況を冷静に見れば、
どう考えてもそういう結論しか出てこないのだ。
しかし、日本はそのまま堕ちっぱなしというわけではない。

何年後になるかわからないが、日本はしぶとく復活するはずである。
国家というのはいつまでも堕ちっぱなしということはなく、
反省して自覚した国民が生まれ、それが国を復興することになるからである。

そのときに、決定的に必要となつてくるのが「理想」である。

地政学の祖であるマッキンダーは、
「人類を導くことができるのは、ただ理想の持つ魅力だけだ」
と言っている。

しかし彼は、同時に現実を冷静に見る目を
忘れてはならないことを鋭く警告している。
それが地理と歴史を冷静に分析した、
地政学という学問が与えてくれる視点なのである。
彼が一九一九年に発表した『デモクラシーの理想と現実』
という本の題名は、このような理想と現実のバランスの大切さを訴えている。

世界はこれから「カオス化」していく。
これはつまり、世界はこれからますます複雑化した
先の見えない場になるということである。

そして日本は、「カオス化」された状況の中で
自立を目指さなければならないし、
むしろ自立せざるを得ない状況に追い込まれることになるかもしれない。
そして、その中で世界に伍していくためには、
日本人は何よりもまず、リアリズムの思考法を身につけなければならない。

日本人は自分で責任を持って戦略を考えるという思考を捨ててしまい、
安易に平和的な解決だけを求めるという体質が染みついてしまった。
たとえば、外交における戦略も「善か悪か」で判断するため、
善を探そうとするあまり、次の一手がどうしても遅くなる。

しかも、日本が「善かれ」と思って世界に主張したことは、
まずもって善として見られていない。
他国はリアリズムの視点で「日本が何を狙っているのか」
と冷酷に見ているのだ。
だからこそ、わが国も外交戦略を「善悪」ではなく、
「強弱」で見るように訓練しなければならない。
「強弱」とは、現在わが国にとって、
この政策は他国と比べて立場を強めてくれるのか
弱めるものかという冷静な判断である。

弱いのであれば、より強い政策を打ち出さなければならないし、
強いものであれば、政策をより国益に近づけなければならない。
こうしたリアリズムの思考を身につけることは、
むしろ「国際的なマナー」なのである。