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地政学を英国で学んだ
しばらくお待ち下さい。
2012年9月14日 日本人が生き残るための「戦略思考」の身につけ方

「アメ通」の執筆を少しお休みさせて頂いている間、
自著(『世界を変えたいなら一度"武器"を捨ててしまおう』)
の発売に伴って、色々頂いた取材などを受けつつ、
九月二十三日(日)に行う、出版記念講演会の準備を進めていた。

前回配信から久しぶりとなるが、今回は、そのお知らせも兼ねて、
私が、今、想うところをざっくりと綴ってみたい。

              -*--*--*-

前述の通り、私は七月末に新刊
『世界を変えたいなら一度"武器"を捨ててしまおう』
(フォレスト出版)を刊行した。( http://goo.gl/ukAbK )

この本は、いままでの地政学のような学問系の本とは一線を画すものである。

いわば「自己啓発本の皮をかぶった戦略本」であり、
私がこの本の中で基本的に主張したかったのは、
「日本人はもっと戦略的に考えて生きるべきだ」という、
まさに、この「アメ通」で、一貫して主張してきたことである。

この本の中では、戦略的発想のカギとなる概念を三つほどあげ、
それらを具体的な例を使って紹介すると共に、
いかに戦略的な思考法を身につけるのかを書いたつもりである。

しかし、この本に対して、ネットに上がっている書評や
数々のブログなどでの反応をいくつか見てみると
残念ながら、私が読者の皆さんに伝えたかった点が、
十分に理解されていないようにも思え、
自分自身の力量不足という点も含め、歯痒い想いを抱いていた。

そんな中で、昨今の「竹島問題」や「尖閣問題」の急展開である。

これらの問題はそれぞれ独立したケースであり、
その原因や経緯は全く違ったものであるが、日本側の対応などを見ていると、
その根っこには現代の日本人に共通した問題があるように思える。

それは日本の、特にエリートや知識人たちの「戦略思考の欠如」である。

もちろん彼ら自身は、自らを戦略的思考が出来ると思っているはずで、
実際に戦略的発想に基いて行動する人は、わずかながらも存在する。
その点については私も否定はしない。

ところが残念なことに、これが個人ではなく集団レベルになると
戦略的思考が劇的に欠如していくというパターンが顕著に見られるのである。

ではどうすればいいのか。

集団レベルではどこまで改善できるかわからないが、
私は少なくとも個人レベルで日本人が戦略思考を身につけるのは
実はそれほどむずかしくないと思っている。

              -*--*--*-

このような問題意識が、私が今回の新刊
『世界を変えたいなら一度"武器"を捨ててしまおう』を
書かせたと言ってよいのだが、それでもまだ「戦略思考の身につけ方」
というトピックに関しては、十分踏み込めなかったと感じている。

そこで、今回の出版記念講演会ではさらに一歩踏みこんで、
その「戦略思考の身につけ方」を、実際に皆さんと実践することにより、
しっかりと身につけて頂きたいと考えた。

今回の講演会は、以下のような三部構成を予定している。

一部、わたしはなぜ『武器捨て本』を書いたのか?
二部、ワークセッション:戦略思考をいかに活用するか
三部、質疑応答

ポイントは、第二部のワークセッションである。

ここでは、私ともう一人、実務に通じた対談パートナーに登場して頂き、
戦略思考をいかに使いこなすか?
特に、私が今回の新刊の中で紹介した「戦略の七階層」の概念を、
皆さんに深く納得して頂き、このスコープを使って、
皆さんご自身が、自分で世界を読み解くことが出来るようなヒントを
提示したいと想っている。

そして、皆さんひとりひとりが、自分の「人生戦略」を構築する
その第一歩を踏み出せるよう、徹底的に話してみたい。

このワークセッションでは、実際に皆さんにも、
自分の戦略思考をチェックする時間を設けるので、
戦略的思考から自分の成功戦略を創り上げる、
という覚悟で参加して欲しい。

              -*--*--*-

軽くと言いつつ、だいぶ長くなってしまったが、
実は、私は今回の講演会に参加しただけで、
皆さんが、「お手軽に戦略思考を身につける」ことができる
という想定はしていない。
「アメ通」読者の皆さんならば、既にお分かりの通り、
戦略思考や、抽象的思考というのは、一朝一夕で身に付くものではない。

しかし、今回の講演会に参加して頂ければ、
少なくとも英国や米国において、「戦略家」と称される人々が
実際に戦略を練る上での「コツ」のようなものを伝授できる
と自負している。

そして、このような「戦略思考」を身に付け、
「リアリスト」として「覚醒」した人々が増えていけば、
日本、及び日本人は、この冷酷な世界で、
逞しく生き残ってゆくことができる・・・
私は本気でそう信じているのである。

当日、皆さんと共に考え、議論出来ることを楽しみにしています。


(おくやま)

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戦略を語れない人生は奴隷だ

技術を制するのは高度な技術ではない。より上流階層からルール決めには対抗できない。
今こそ日本人は「戦略の階層」を学び、その全体像を理解しなければならない。

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さて、早速ですが、・ネオコンをはじめとする勢力が狙ってきた米国の世界一極覇権支配は、長くは続かない。・中国が膨張し、アジアの覇権をねらい、世界は多極構造になる。 90年代から上記のように予想し、米国内でも論争してきたのがリアリスト学派です。

リアリスト学派は、国家のパワー(軍事力、政治力、人口規模、経済力等)がもっとも大事な要素と考え、

正義やイデオロギー、理念は関係ない。国際関係はパワーで決まり、パワーを予測し戦略を立てよう

と考える学派で、19世紀の英国の行ったバランス・オブ・パワーを活用した大戦略を信条とします。

ところが「リアリスト」を自認する日本の親米保守派は、
「経済中心主義」で「安保無料(だだ)乗り」をし続けていますが、
実は、彼らは、以下の2点で決定的、かつ、致命的な誤りを犯していたのです。
そして、そうした日本の政策は、冷酷な米国のリアリストから、
単なる「バンドワゴニング」に過ぎない、と足元を見透かされているのです。

その2点とは、

(1)日本はアングロサクソン(米英)についていれば大丈夫。

(2)米国は「民主制度」と「法治」、「人権」を重んずる日本を信頼し、
   一党独裁の共産主義中国を嫌っている。

ということです。

まず、(1)については、
日英同盟時も上手くいった。だから、これからも米国についてゆけば大丈夫!
万事問題ないというものです。

しかし、我が日本が戦後60年間、幸いにして戦争に巻き込まれなかったのは、
ほとんど偶然の産物であったということは、強く認識しておく必要があります。

米国は国益に係わることならば、いとも簡単に「友達」を切り捨て、裏切る国である。
国論が変われば友好国をあっさり切り捨ててきたことは、これまでの歴史の事実が証明しています。

・日中戦争では、蒋介石を応援しつつも、途中から毛沢東支援にまわった。

・ソ連打倒のためには台湾(中華民国)を切り捨て、中華人民共和国と国交を結んだ。

・ベトナム戦争では出口がみえなくなり、結局南ベトナム支援からあっさり撤退した。

・米国が支援していた南ベトナムは崩壊し、大量の難民があふれ出た。

・イラン・イラク戦争の時、イランが戦争に勝って影響力が拡大することを恐れた米国は、
 サダムフセインに(イラク)に軍事的な支援をした。
 しかし、支援した米国は干渉してこないと思ったフセインは、その後クウェートに侵攻し、
 湾岸戦争、イラク侵攻と2度の戦争で米国に打ちのめされ、最後は米軍に捕まり処刑された。

如何でしょうか?

これでもまだあなたは、アメリカはずっと「友達」でいてくれる!

と思えますか?

次に、(2)についてですが、
欧米メディアなどの報道によれば、米国内における中国の工作員の数は激増しています。
更には、人民解放軍には「政治工作条例」なるものまであります。
彼らは世論戦、心理戦、法律戦からなる「三戦」の任務を与えられ、
まさに今、中国は国策として、米国内で「世論戦」を仕掛けている、というのが冷酷な事実です。

正義や真実でなく、ウソでも現実をつくれると考える中国の
カネも人員もかけたまさに「人海戦術」的な、この国家戦略が功を奏し、
すでに米国世論では「尖閣は日本が強奪した島だ」ということに傾き始めている・・・
この危険な状況を皆さんはご存知でしょうか?

-*- -*-

例えば、韓国との従軍慰安婦問題をみるまでもなく、
日本国内で、いわゆる「保守派」といわれる人達が、
どれだけ「真実」を主張しても、
同じ日本人であるはずの国内左翼勢力がこの外患に呼応するという、
典型的なパターンに陥っている事例は、枚挙に暇がありません。

白州次郎は「日本をプリンシプルのない国」と言いました。
しかし、残念ながら、この分析は現在の日本にも今だに当てはまっているのです。

これらの冷酷な事実を踏まえ、
本サイトで皆さんとともに真剣に考えていきたいのは、以下の2点です。

・日本はいかにして「パワー」を獲得すればいいのか?

・どんな国家像を描き、グランド・ストラテジーを立てればよいのか?

この二つの質問を念頭に据えて、米国のリアリスト思考を学び、
日本におけるリアリスト思考を広げ、リアリスト学派をつくっていく。

これが、このサイト、www.realist.jpの目的です。
あなたも是非議論に加わって下さい。



リアリスト思考を最初に日本にもたらした、
シカゴ学派、元フーバー研究所上席研究員、故・片岡鉄哉先生に捧ぐ

日本がこのままの状態でいけば、
少なくとも十年以内に、二流、三流の地位まで確実に堕ちていくことになる。
現在の日本の状況を冷静に見れば、
どう考えてもそういう結論しか出てこないのだ。
しかし、日本はそのまま堕ちっぱなしというわけではない。

何年後になるかわからないが、日本はしぶとく復活するはずである。
国家というのはいつまでも堕ちっぱなしということはなく、
反省して自覚した国民が生まれ、それが国を復興することになるからである。

そのときに、決定的に必要となつてくるのが「理想」である。

地政学の祖であるマッキンダーは、
「人類を導くことができるのは、ただ理想の持つ魅力だけだ」
と言っている。

しかし彼は、同時に現実を冷静に見る目を
忘れてはならないことを鋭く警告している。
それが地理と歴史を冷静に分析した、
地政学という学問が与えてくれる視点なのである。
彼が一九一九年に発表した『デモクラシーの理想と現実』
という本の題名は、このような理想と現実のバランスの大切さを訴えている。

世界はこれから「カオス化」していく。
これはつまり、世界はこれからますます複雑化した
先の見えない場になるということである。

そして日本は、「カオス化」された状況の中で
自立を目指さなければならないし、
むしろ自立せざるを得ない状況に追い込まれることになるかもしれない。
そして、その中で世界に伍していくためには、
日本人は何よりもまず、リアリズムの思考法を身につけなければならない。

日本人は自分で責任を持って戦略を考えるという思考を捨ててしまい、
安易に平和的な解決だけを求めるという体質が染みついてしまった。
たとえば、外交における戦略も「善か悪か」で判断するため、
善を探そうとするあまり、次の一手がどうしても遅くなる。

しかも、日本が「善かれ」と思って世界に主張したことは、
まずもって善として見られていない。
他国はリアリズムの視点で「日本が何を狙っているのか」
と冷酷に見ているのだ。
だからこそ、わが国も外交戦略を「善悪」ではなく、
「強弱」で見るように訓練しなければならない。
「強弱」とは、現在わが国にとって、
この政策は他国と比べて立場を強めてくれるのか
弱めるものかという冷静な判断である。

弱いのであれば、より強い政策を打ち出さなければならないし、
強いものであれば、政策をより国益に近づけなければならない。
こうしたリアリズムの思考を身につけることは、
むしろ「国際的なマナー」なのである。