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地政学を英国で学んだ
しばらくお待ち下さい。
2012年12月11日 〜「戦略はウソ」で「戦術は真実」だ。〜

一年の総決算期の今だからこそ、
あなた自身の壮大な「フィクション」を思い描いてみませんか?

              -:-:-:-:-:-:-

皆さんは、このお話をご存知でしょうか?

ある二人のセールスマンが、
靴を売るためにアフリカに派遣されました。

アフリカに到着後、このふたりは、それぞれ本社に報告します。

一人は、
「アフリカではみんな裸足です。そもそも、靴のマーケット自体がありません・・・」
と言いました。

もう一人は、
「アフリカではまだ誰も靴を履いていない。だから、これから無尽蔵に売れます!」

と報告したという話で、
それぞれの考え方/着想の違いを端的に表したものです。

一般的には、後者の「無尽蔵に売れる!」とポジティブ発言した人が、
いわゆる成功者となってゆく人である、と解釈されていることが多いエピソードです。

でも実は、この話のポイントは、

この二人のセールスマンが云々という話ではなくて、
その会社の社長が、そもそもどのような「世界観/戦略」を持っているのか?

というところにあるのです。

             -:-:-:-:-:-:-

マーケットの現場から日々挙げられてくる一つ一つの具体的事例。
それこそがリアルなニーズなので、その情報を元に経営判断を行う、
というのは、当然の話です。

ですが、ここでもう少し掘り下げて考えてみます。

上述のアフリカの話で言えば、

「無尽蔵に売れる!」と報告したセールスマンと
この会社の社長が同じ方向性を向いていれば、
例えば、次のように考えて、実際に行動に移すでしょう。

アフリカの人達は、みな裸足だから、すぐに靴は売れない。
だから初期コストとして、予算をかけて、
靴のプロモーションをやり、長期的視点で市場を育てゆこう、と。

ここまでは、皆さんもすぐに納得できる流れではないでしょうか。

さて、それでは、あなたがもしこの会社の社長さんならば、
今だ靴を履くという習慣がないこのアフリカの人達のマーケットを、
どのくらいのスパンを想定して育ててゆこうか・・・と考えますか?

3年ですか?5年ですか?
それとも、10年の長期戦に挑みますか?
もしかしたら、「いや、明日にでも靴を履かせてみせる!」
と意気込む方がいるかも知れません。(笑)

さて、社長であるあなたが、この「判断」を下すとき、
何を基準にして、何を拠り所にして、このシビアな決断を行いますか?

現地からの報告では、アフリカの人達は靴を履きません。
目の前の「現実」は、文字通り、市場がないのです。
つまり、「何もない」という「現実」から、
「将来、このアフリカという土地はどうなってゆくのか?」
という社長自身の「ヴィジョン」。
これを拠り所・根拠にして、経営判断を下すより他ない・・・

これは皆さんにも納得して頂けるのではないでしょうか?

つまり、将来の素晴らしい結果をつくりだすためには
社長自身が「未来予想図」をつくる必要があるのです。

目の前にはなにもありません。
ということは、この「未来予想図」というのは、
視点を少し変えてみれば、壮大な「ウソ」なのです。

予想し、想像して未来像を作り上げる、「フィクション」です。

「もしかしたらこうなる、いや、必ずこうなるはずだ」という
強い意志を元に「フィクション(ウソ)」の戦略を立てる。
一見すると、とんでもない話のように聞こえるかもしれませんが、
高次元での「戦略立案」の真髄は、ここにあるのです。

アフリカの広大な大地を、裸足で歩く現地の人。
それを報告してきたセールスマンのコメントは、
重要な要素として取り入れる。

しかし、それをそのまま解釈せずに、
自らの「フィクション」を創造して、これを「ヴィジョン」へと昇華させ、
強力な「戦略」を固めることが、この社長には求められているのです。

靴が売れるか売れないかは現実に起こっていない未来なので、
靴が売れるというフィクションをつくることが出来ますし、
靴が売れないというフィクションもつくれます。

そして、このことは、なにもこの社長だけでなく・・・
もうお分かりですね、あなたの人生にもそのまま当てはまります。

「人生戦略」と言ったら、少し大げさでしょうか。
自分の人生を設計するときにも、これまでお話してきたことと
同様のことが言えるのです。
「フィクション(ウソ)」が必要なのです。

-:-:-:-:-:-:-

本当に有効な「戦略」というものを手に入れるためには、
戦略を「階層」として捉え直す必要があります。

ここまでお話してきたように、大きな「戦略」というのは、
より上位階層の視点から見ないと、
正確で有効な判断は下せないのです。

「Windows」でお馴染みのマイクロソフト社、
その日本法人社長だった成毛真氏によると、
かのビル・ゲイツ氏は、まだ数千万円もする大型コンピューターが
ようやく企業で使われ始めた頃から、
「 a computer on every desk and in every home」
と口癖のように言っていたそうです。

今でこそ誰もがPCを持っていますが、
ゲイツ氏は、まだろくにコンピューターが普及していないその当時から、
「どの家庭の机の上にも普及する」という「未来図」を持っていたようです。
これなどは、まさに「壮大な嘘」を自分についていた、
と言えるのではないでしょうか。

「戦略の階層」という考え方に基づくと、
「ヴィジョン」というのは、かなり上位階層の概念になります。
そこまで考えを深めている人は、実際のところ、100人のうち数人でしょう。

自分にとって最も望ましい「仮定」を自分で立てる。
そして、「現実」のほうをその「フィクション」にアジャストするのです。

そのための強力な武器となるのが、この「戦略の階層」という考え方です。
あなたや貴方の事業が、この「戦略の階層」の上にしっくりと配置された時、
あなただけの、かけがえのないオリジナルな「大戦略」が自然と現れてきます。

もちろん、最初は、難しいかも知れません。

それは、戦後、「憲法」ですら自らの手で変えてこなかったくらいですから、
そもそも、我々日本人は、「考え方そのもの」を変えたり、
時代の流れの中で価値の順番を変えていく、といった「戦略的思考」が苦手なのです。

しかし、まずは、この現実に私達一人ひとりが気付くことが大切です。
そして、これを自分のこととして、
大きな枠組について考えてみたり、それを意識するかしないか。
これこそが決定的に重要なのです。

そのサポートとなるようなCDを作りました。

・フィクションは戦略であると確信したい。
・どんどん未来像が近寄ってくる度に鮮明になる人もいるでしょう。
・全階層を最初から埋められないかも知れません。
・結果のわかりやすいスキルだけやっていたと気づくかもしれません。
・人に会ってその人のスケールを感じ取りやすくなるでしょう。
・自分の世界観をストレッチするのもいいかもしれません。

詳細は、こちらからどうぞ
http://www.realist.jp/strata.html

つづきはこちら アメリカ通信バックナンバーへもどる


「戦略の階層」を解説するCD

戦略を語れない人生は奴隷だ

技術を制するのは高度な技術ではない。より上流階層からルール決めには対抗できない。
今こそ日本人は「戦略の階層」を学び、その全体像を理解しなければならない。

詳しくはこちらをどうぞ


このサイトはリアリズムについて学ぶ人を増やすためのサイトです。

さて、早速ですが、・ネオコンをはじめとする勢力が狙ってきた米国の世界一極覇権支配は、長くは続かない。・中国が膨張し、アジアの覇権をねらい、世界は多極構造になる。 90年代から上記のように予想し、米国内でも論争してきたのがリアリスト学派です。

リアリスト学派は、国家のパワー(軍事力、政治力、人口規模、経済力等)がもっとも大事な要素と考え、

正義やイデオロギー、理念は関係ない。国際関係はパワーで決まり、パワーを予測し戦略を立てよう

と考える学派で、19世紀の英国の行ったバランス・オブ・パワーを活用した大戦略を信条とします。

ところが「リアリスト」を自認する日本の親米保守派は、
「経済中心主義」で「安保無料(だだ)乗り」をし続けていますが、
実は、彼らは、以下の2点で決定的、かつ、致命的な誤りを犯していたのです。
そして、そうした日本の政策は、冷酷な米国のリアリストから、
単なる「バンドワゴニング」に過ぎない、と足元を見透かされているのです。

その2点とは、

(1)日本はアングロサクソン(米英)についていれば大丈夫。

(2)米国は「民主制度」と「法治」、「人権」を重んずる日本を信頼し、
   一党独裁の共産主義中国を嫌っている。

ということです。

まず、(1)については、
日英同盟時も上手くいった。だから、これからも米国についてゆけば大丈夫!
万事問題ないというものです。

しかし、我が日本が戦後60年間、幸いにして戦争に巻き込まれなかったのは、
ほとんど偶然の産物であったということは、強く認識しておく必要があります。

米国は国益に係わることならば、いとも簡単に「友達」を切り捨て、裏切る国である。
国論が変われば友好国をあっさり切り捨ててきたことは、これまでの歴史の事実が証明しています。

・日中戦争では、蒋介石を応援しつつも、途中から毛沢東支援にまわった。

・ソ連打倒のためには台湾(中華民国)を切り捨て、中華人民共和国と国交を結んだ。

・ベトナム戦争では出口がみえなくなり、結局南ベトナム支援からあっさり撤退した。

・米国が支援していた南ベトナムは崩壊し、大量の難民があふれ出た。

・イラン・イラク戦争の時、イランが戦争に勝って影響力が拡大することを恐れた米国は、
 サダムフセインに(イラク)に軍事的な支援をした。
 しかし、支援した米国は干渉してこないと思ったフセインは、その後クウェートに侵攻し、
 湾岸戦争、イラク侵攻と2度の戦争で米国に打ちのめされ、最後は米軍に捕まり処刑された。

如何でしょうか?

これでもまだあなたは、アメリカはずっと「友達」でいてくれる!

と思えますか?

次に、(2)についてですが、
欧米メディアなどの報道によれば、米国内における中国の工作員の数は激増しています。
更には、人民解放軍には「政治工作条例」なるものまであります。
彼らは世論戦、心理戦、法律戦からなる「三戦」の任務を与えられ、
まさに今、中国は国策として、米国内で「世論戦」を仕掛けている、というのが冷酷な事実です。

正義や真実でなく、ウソでも現実をつくれると考える中国の
カネも人員もかけたまさに「人海戦術」的な、この国家戦略が功を奏し、
すでに米国世論では「尖閣は日本が強奪した島だ」ということに傾き始めている・・・
この危険な状況を皆さんはご存知でしょうか?

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例えば、韓国との従軍慰安婦問題をみるまでもなく、
日本国内で、いわゆる「保守派」といわれる人達が、
どれだけ「真実」を主張しても、
同じ日本人であるはずの国内左翼勢力がこの外患に呼応するという、
典型的なパターンに陥っている事例は、枚挙に暇がありません。

白州次郎は「日本をプリンシプルのない国」と言いました。
しかし、残念ながら、この分析は現在の日本にも今だに当てはまっているのです。

これらの冷酷な事実を踏まえ、
本サイトで皆さんとともに真剣に考えていきたいのは、以下の2点です。

・日本はいかにして「パワー」を獲得すればいいのか?

・どんな国家像を描き、グランド・ストラテジーを立てればよいのか?

この二つの質問を念頭に据えて、米国のリアリスト思考を学び、
日本におけるリアリスト思考を広げ、リアリスト学派をつくっていく。

これが、このサイト、www.realist.jpの目的です。
あなたも是非議論に加わって下さい。



リアリスト思考を最初に日本にもたらした、
シカゴ学派、元フーバー研究所上席研究員、故・片岡鉄哉先生に捧ぐ

日本がこのままの状態でいけば、
少なくとも十年以内に、二流、三流の地位まで確実に堕ちていくことになる。
現在の日本の状況を冷静に見れば、
どう考えてもそういう結論しか出てこないのだ。
しかし、日本はそのまま堕ちっぱなしというわけではない。

何年後になるかわからないが、日本はしぶとく復活するはずである。
国家というのはいつまでも堕ちっぱなしということはなく、
反省して自覚した国民が生まれ、それが国を復興することになるからである。

そのときに、決定的に必要となつてくるのが「理想」である。

地政学の祖であるマッキンダーは、
「人類を導くことができるのは、ただ理想の持つ魅力だけだ」
と言っている。

しかし彼は、同時に現実を冷静に見る目を
忘れてはならないことを鋭く警告している。
それが地理と歴史を冷静に分析した、
地政学という学問が与えてくれる視点なのである。
彼が一九一九年に発表した『デモクラシーの理想と現実』
という本の題名は、このような理想と現実のバランスの大切さを訴えている。

世界はこれから「カオス化」していく。
これはつまり、世界はこれからますます複雑化した
先の見えない場になるということである。

そして日本は、「カオス化」された状況の中で
自立を目指さなければならないし、
むしろ自立せざるを得ない状況に追い込まれることになるかもしれない。
そして、その中で世界に伍していくためには、
日本人は何よりもまず、リアリズムの思考法を身につけなければならない。

日本人は自分で責任を持って戦略を考えるという思考を捨ててしまい、
安易に平和的な解決だけを求めるという体質が染みついてしまった。
たとえば、外交における戦略も「善か悪か」で判断するため、
善を探そうとするあまり、次の一手がどうしても遅くなる。

しかも、日本が「善かれ」と思って世界に主張したことは、
まずもって善として見られていない。
他国はリアリズムの視点で「日本が何を狙っているのか」
と冷酷に見ているのだ。
だからこそ、わが国も外交戦略を「善悪」ではなく、
「強弱」で見るように訓練しなければならない。
「強弱」とは、現在わが国にとって、
この政策は他国と比べて立場を強めてくれるのか
弱めるものかという冷静な判断である。

弱いのであれば、より強い政策を打ち出さなければならないし、
強いものであれば、政策をより国益に近づけなければならない。
こうしたリアリズムの思考を身につけることは、
むしろ「国際的なマナー」なのである。