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地政学を英国で学んだ
しばらくお待ち下さい。
2012年12月27日 安倍政権の行方を「戦略の階層」で読み解く

共同管理人の和田です。

さて、久しぶりの師走の選挙もおわり、
民主党が大敗して再び自民党政権が誕生したことは、
皆さんもすでにご存知の通りかと思います。

今回の選挙は、われわれ日本国民に
色々なドラマを見せてくれたわけですが、
私は「戦略の階層」を使って、
安倍政権について少し考えてみました。

たとえば、選挙なので、もちろん各党とも「政策」を掲げます。

ですが、「戦略の階層」に当てはめて考えてみると、
各党が今回掲げた"政策"は、実は...
戦略学的には、「政策」(Policy)とは言えません。

たとえば、『ポリシー(Policy)は「子育て手当」』
といわれてもピンと来ませんね。

CDを聴いて頂いた方や、奥山先生の講演会に参加された方は、
お分かりかと思いますが、日本の各政党の"政策"は、
その実態は「戦術」レベルのことだったりします。

そこで、安倍政権の誕生にちなんで、自民党のパンフレットや言説から
「政策」として提出とされているものを確認してみます。

「戦略の階層」は、
「世界観」「政策」「大戦略」
までの上位概念と
「軍事戦略」「作戦」「戦術」「技術」
の下位概念の、
合計七階層からなります。

安倍さんの政策を「戦略の階層」に当てはめて、
「世界観」から「作戦」あたりまで考えてみましょう。

-:-:-:-:-:-

★「世界観」

安倍さんが以前より掲げているのが「美しい国」です。

今回の選挙中、この標語は使っていなかったようですが、
やはり日本は、天皇陛下を中心とした歴史のある礼節の国であり、
自然と共生しつつ、自主独立の気概のある国民、国家像を指して、
「美しい」としているようです。

★「政策」

そして、その「美しい国」に沿って「日本をとりもどす」
というストーリーを描いています。

「戦後レジームからの脱却」のための憲法改正を視野に入れています。

皇室潰しを狙う国内外の勢力から、さっそく女性宮家設置を阻止できました。
男系男子の伝統を守るために、皇室典範の改正もあると思われます。

★「大戦略」

今回の組閣で、畏友である麻生氏が入閣しました。
彼が提唱しているのが、「自由と繁栄の弧」という概念です。

安倍さんは、この概念を踏まえ、
「TPP」などを通じて、日米同盟の強化と
経済再建政策を考えていると思われます。

「TPP」は諸刃ではありますが、
農水省の欺瞞であるカロリー計算の食糧自給率など
国内の議論の骨子から固めていただきたい。
そして、「TPP」が明らかに含意している、
「中国への経済封じ込め」
ができるかどうかも交渉次第でしょう。

★「軍事戦略」

集団的自衛権の行使容認を
日米間の合意として進めていくことでしょう。

尖閣、竹島問題ふくめた対抗策ですが、
夏の参院選と景気対策の行方までは静かに動くのではないでしょうか。

安倍さんは、上位概念である経済再建を重要視しているので
「竹島の日」の政府主催による、韓国への刺激はしないとしています。

経済戦略としては「デフレ脱却」のアベノミクスといわれる
量的緩和、円安誘導から進めています。
輸出拡大と製造業の雇用創出も狙っているでしょう。

★「作戦」

前回の政権時にも取り組んでいた、
「国民投票法案」、「教育基本法」改正を
どう応用していくかも注目されます。

-:-:-:-:-:-

読者の皆さんが投票した政党や
政治家は「戦略の階層」のどこに当て嵌るでしょうか?

このように政党や会社、個人の生き方を
「戦略の階層」に当てはめて考えてみる。

そして、自分と同じ「価値観」を共有する組織、
個人を探してみるのも面白いと思います。

年末年始、ちょうど皆さんも
平成25年度からの計画を立てる時期ではないでしょうか?

ぜひ、この「戦略の階層」を活用してみて下さい。

(共同管理人 和田)

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「戦略の階層」を解説するCD

戦略を語れない人生は奴隷だ

技術を制するのは高度な技術ではない。より上流階層からルール決めには対抗できない。
今こそ日本人は「戦略の階層」を学び、その全体像を理解しなければならない。

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このサイトはリアリズムについて学ぶ人を増やすためのサイトです。

さて、早速ですが、・ネオコンをはじめとする勢力が狙ってきた米国の世界一極覇権支配は、長くは続かない。・中国が膨張し、アジアの覇権をねらい、世界は多極構造になる。 90年代から上記のように予想し、米国内でも論争してきたのがリアリスト学派です。

リアリスト学派は、国家のパワー(軍事力、政治力、人口規模、経済力等)がもっとも大事な要素と考え、

正義やイデオロギー、理念は関係ない。国際関係はパワーで決まり、パワーを予測し戦略を立てよう

と考える学派で、19世紀の英国の行ったバランス・オブ・パワーを活用した大戦略を信条とします。

ところが「リアリスト」を自認する日本の親米保守派は、
「経済中心主義」で「安保無料(だだ)乗り」をし続けていますが、
実は、彼らは、以下の2点で決定的、かつ、致命的な誤りを犯していたのです。
そして、そうした日本の政策は、冷酷な米国のリアリストから、
単なる「バンドワゴニング」に過ぎない、と足元を見透かされているのです。

その2点とは、

(1)日本はアングロサクソン(米英)についていれば大丈夫。

(2)米国は「民主制度」と「法治」、「人権」を重んずる日本を信頼し、
   一党独裁の共産主義中国を嫌っている。

ということです。

まず、(1)については、
日英同盟時も上手くいった。だから、これからも米国についてゆけば大丈夫!
万事問題ないというものです。

しかし、我が日本が戦後60年間、幸いにして戦争に巻き込まれなかったのは、
ほとんど偶然の産物であったということは、強く認識しておく必要があります。

米国は国益に係わることならば、いとも簡単に「友達」を切り捨て、裏切る国である。
国論が変われば友好国をあっさり切り捨ててきたことは、これまでの歴史の事実が証明しています。

・日中戦争では、蒋介石を応援しつつも、途中から毛沢東支援にまわった。

・ソ連打倒のためには台湾(中華民国)を切り捨て、中華人民共和国と国交を結んだ。

・ベトナム戦争では出口がみえなくなり、結局南ベトナム支援からあっさり撤退した。

・米国が支援していた南ベトナムは崩壊し、大量の難民があふれ出た。

・イラン・イラク戦争の時、イランが戦争に勝って影響力が拡大することを恐れた米国は、
 サダムフセインに(イラク)に軍事的な支援をした。
 しかし、支援した米国は干渉してこないと思ったフセインは、その後クウェートに侵攻し、
 湾岸戦争、イラク侵攻と2度の戦争で米国に打ちのめされ、最後は米軍に捕まり処刑された。

如何でしょうか?

これでもまだあなたは、アメリカはずっと「友達」でいてくれる!

と思えますか?

次に、(2)についてですが、
欧米メディアなどの報道によれば、米国内における中国の工作員の数は激増しています。
更には、人民解放軍には「政治工作条例」なるものまであります。
彼らは世論戦、心理戦、法律戦からなる「三戦」の任務を与えられ、
まさに今、中国は国策として、米国内で「世論戦」を仕掛けている、というのが冷酷な事実です。

正義や真実でなく、ウソでも現実をつくれると考える中国の
カネも人員もかけたまさに「人海戦術」的な、この国家戦略が功を奏し、
すでに米国世論では「尖閣は日本が強奪した島だ」ということに傾き始めている・・・
この危険な状況を皆さんはご存知でしょうか?

-*- -*-

例えば、韓国との従軍慰安婦問題をみるまでもなく、
日本国内で、いわゆる「保守派」といわれる人達が、
どれだけ「真実」を主張しても、
同じ日本人であるはずの国内左翼勢力がこの外患に呼応するという、
典型的なパターンに陥っている事例は、枚挙に暇がありません。

白州次郎は「日本をプリンシプルのない国」と言いました。
しかし、残念ながら、この分析は現在の日本にも今だに当てはまっているのです。

これらの冷酷な事実を踏まえ、
本サイトで皆さんとともに真剣に考えていきたいのは、以下の2点です。

・日本はいかにして「パワー」を獲得すればいいのか?

・どんな国家像を描き、グランド・ストラテジーを立てればよいのか?

この二つの質問を念頭に据えて、米国のリアリスト思考を学び、
日本におけるリアリスト思考を広げ、リアリスト学派をつくっていく。

これが、このサイト、www.realist.jpの目的です。
あなたも是非議論に加わって下さい。



リアリスト思考を最初に日本にもたらした、
シカゴ学派、元フーバー研究所上席研究員、故・片岡鉄哉先生に捧ぐ

日本がこのままの状態でいけば、
少なくとも十年以内に、二流、三流の地位まで確実に堕ちていくことになる。
現在の日本の状況を冷静に見れば、
どう考えてもそういう結論しか出てこないのだ。
しかし、日本はそのまま堕ちっぱなしというわけではない。

何年後になるかわからないが、日本はしぶとく復活するはずである。
国家というのはいつまでも堕ちっぱなしということはなく、
反省して自覚した国民が生まれ、それが国を復興することになるからである。

そのときに、決定的に必要となつてくるのが「理想」である。

地政学の祖であるマッキンダーは、
「人類を導くことができるのは、ただ理想の持つ魅力だけだ」
と言っている。

しかし彼は、同時に現実を冷静に見る目を
忘れてはならないことを鋭く警告している。
それが地理と歴史を冷静に分析した、
地政学という学問が与えてくれる視点なのである。
彼が一九一九年に発表した『デモクラシーの理想と現実』
という本の題名は、このような理想と現実のバランスの大切さを訴えている。

世界はこれから「カオス化」していく。
これはつまり、世界はこれからますます複雑化した
先の見えない場になるということである。

そして日本は、「カオス化」された状況の中で
自立を目指さなければならないし、
むしろ自立せざるを得ない状況に追い込まれることになるかもしれない。
そして、その中で世界に伍していくためには、
日本人は何よりもまず、リアリズムの思考法を身につけなければならない。

日本人は自分で責任を持って戦略を考えるという思考を捨ててしまい、
安易に平和的な解決だけを求めるという体質が染みついてしまった。
たとえば、外交における戦略も「善か悪か」で判断するため、
善を探そうとするあまり、次の一手がどうしても遅くなる。

しかも、日本が「善かれ」と思って世界に主張したことは、
まずもって善として見られていない。
他国はリアリズムの視点で「日本が何を狙っているのか」
と冷酷に見ているのだ。
だからこそ、わが国も外交戦略を「善悪」ではなく、
「強弱」で見るように訓練しなければならない。
「強弱」とは、現在わが国にとって、
この政策は他国と比べて立場を強めてくれるのか
弱めるものかという冷静な判断である。

弱いのであれば、より強い政策を打ち出さなければならないし、
強いものであれば、政策をより国益に近づけなければならない。
こうしたリアリズムの思考を身につけることは、
むしろ「国際的なマナー」なのである。