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地政学を英国で学んだ
しばらくお待ち下さい。
2013年01月25日 戦略なき国家に未来はない

(前回よりつづき)

『月刊日本』(2012/11月号)より

■戦略なき国家に未来はない

―― これから先大混乱が予想される国際社会を生き抜くためには、
  戦略が必要である。しかし、日本人はどうも戦略的思考が苦手なようだ。 

奥山 

それにはいくつか理由がある。先日出版された
拙著『世界を変えたいなら一度"武器"を捨ててしまおう』
の中でも詳しく述べたが、その一つとして、
日本人が奴隷制や牧畜を経験してこなかったことが挙げられる。

欧米では古くから奴隷制が採用されてきたし、牧畜も行われていたため、
自分以外の動物(奴隷も動物の一種である)の群れを
コントロールする術を伝統的に身につけている。

実際、欧米の雇用システムでは現在でも、人間は部品のように扱われている。

また、戦略においては、抽象的に物事を思考することが重要となる。
自分たちが今どのような位置にいてこれからどこを目指すのか、
それを認識するためには一段高いところから物事を眺めなければならない。

すなわち、目の前にある具体的なものから距離を置くということだ。

その点、日本人は具体的な話をするのは得意だが、抽象的な話は苦手だ。
たとえば、アメリカの国務省は田中角栄について、
具体的な問題にはめっぽう強いが、抽象的な問題になると関心を抱かず
イラつき始めると外交公電に記録していた。

もっとも、抽象的思考能力は、訓練すれば必ず身につけることができるものだ。

日本人は海外の学問を学ぶことが得意なので、
ネオリアリズム関連の知識をどんどん輸入して学べば、
冷徹な国際社会に対応していくことも可能になるだろう。

日本の歴史を振り返ってみると、戦略を持って国際社会に挑んでいた時期もある。
それは明治時代の富国強兵、戦前の大東亜共栄圏、そして戦後の吉田ドクトリンだ。

実は現在の日本も知らず知らずの内にある戦略を採用している。
それはヘッジングと呼ばれる、米中に対する二股がけ戦略である。

アメリカや中国は、二国の間を行ったり来たりしている
日本の真意がどこにあるか測りかねているだろう。

もう一つがボーキングと呼ばれる先延ばし戦略だ。
TPPにしてもオスプレイにしても、日本は「やります」と言っておきながら
ズルズルと先延ばししてきた。これは日本の役所のお家芸でもある。

日本はこうした行動を自分たちでは戦略として意識はしていないが、
外から見れば立派な戦略だ。しかし、無意識的な戦略ほど怖いものはない。

仮にこれから先アメリカが没落するようなことがあれば、
彼らは日本の戦略に嵌められたと感じ、恨みを抱くかもしれない。

しかし、そもそも日本人自身が自分たちの行動の意味を理解していなければ、
日本人はなぜアメリカが怒っているのかもわからず、
対応策を大きく誤ってしまうだろう。

重要なことは、自分たちがどのような行動をとっているのか、
外国からどのように見られているのかを強く意識することだ。
そしてそのためには、前述した抽象度の高い思考法が
エリートたちに決定的に必要となってくるのだ。

自分たちが今何をやっているのかさえわからないという状態が続くのであれば、
日本が滅びるのも時間の問題と言わざるを得ないだろう。

(おわり)

※このメルマガは転送自由です。(ただし出典を残して下さい)

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▼S・ウォルトに学ぶ日本が生き残るための国際政治学

このCDは、日本にリアリズムを浸透させリアリスト(学派)をつくる
という大それた目標のためのものです。
タイトルはのんびりしていますが、実は切迫してきています。

リアリスト派は、
アメリカは一極覇権はこれまでも、これからも続けるべきでない。
(そもそもその力もなくなってきている。)
むしろ地域覇権国や友好国を利用して、軍事介入も減らしつつ
世界管理をしていくべきだという勢力です。

太く短い一極覇権でなく、強く長くつづく覇権を目指す勢力です。

リアリズムの泰斗、シカゴ大学のミアシャイマー教授の定義では
経済規模の小さいイギリスやフランスは大国なのに、
日本は大国ではないとされています。

その現実を見ることが必要です。

そして、「現実をみる」とはどういうことなのでしょうか?

それは、日本人の多くが米国の国際戦略を学ぶことで、
米国の動きを予測し、他の東アジア諸国の戦略をも理解し、
日本の安全保障上の危機を悟り、外国との同盟や、
また、軍事衝突も含めた紛争にどう対処するのか。

あくまでもリアルに、
そして、シビアに学ぶということなのです。

今回企画した、S・ウォルト教授の理論を説明したCDは、
こんな方に、ぜひお聴き頂きたいです。

・外交戦略を「善悪」ではなく、「強弱」で見るように訓練したい人。
・国際戦略をビジネスにも応用したい人
・パワーを持った相手に抵抗するための戦略を知りたい人
・日本が無意識に行っている戦略を知りたい人
・政治家を目指す人
・経営者として欧米の戦略を応用したいと思っている人

そして、残念ながら、このような方には必要はないかもしれません・・・

・米国の一極覇権が続き米国が日本を今後も守ると考えている方
・中国の念願である「日米分断」を果たすことはないだろうと考えている方
・米国が経済成長で中国に追いつかれることがなく、軍事費も同様であると思う方

収録内容

▼大著「米国世界戦略の核心」を一時間で理解するための十の質問

1:なぜいまウォルトの理論を理解する必要があるんですか?
2:ウォルトって何者ですか?ハーヴァード大学教授ってやっぱりすごい?
3:本の全体像を教えて下さい
4:ウォルトの理論はあるんですか?どんな「前提」があるんでしょうか?
5:アメリカ以外の国々が採用している「抵抗戦略」を具体的に教えて下さい。
6:日本もアメリカに対して「抵抗戦略」を使っているんですか?
7:アメリカのパワーを利用する戦略
8:この本でウォルトが本当に訴えかけたかったことは?
9:「オフショア・バランシング」ってどんな大戦略なんですか?
10:これを踏まえて日本のリーダーはどう考えればいいんですか?

ぜひ、下記のURLよりお申込み下さい。

http://www.realist.jp/walt-cd.html

つづきはこちら アメリカ通信バックナンバーへもどる


「戦略の階層」を解説するCD

戦略を語れない人生は奴隷だ

技術を制するのは高度な技術ではない。より上流階層からルール決めには対抗できない。
今こそ日本人は「戦略の階層」を学び、その全体像を理解しなければならない。

詳しくはこちらをどうぞ


このサイトはリアリズムについて学ぶ人を増やすためのサイトです。

さて、早速ですが、・ネオコンをはじめとする勢力が狙ってきた米国の世界一極覇権支配は、長くは続かない。・中国が膨張し、アジアの覇権をねらい、世界は多極構造になる。 90年代から上記のように予想し、米国内でも論争してきたのがリアリスト学派です。

リアリスト学派は、国家のパワー(軍事力、政治力、人口規模、経済力等)がもっとも大事な要素と考え、

正義やイデオロギー、理念は関係ない。国際関係はパワーで決まり、パワーを予測し戦略を立てよう

と考える学派で、19世紀の英国の行ったバランス・オブ・パワーを活用した大戦略を信条とします。

ところが「リアリスト」を自認する日本の親米保守派は、
「経済中心主義」で「安保無料(だだ)乗り」をし続けていますが、
実は、彼らは、以下の2点で決定的、かつ、致命的な誤りを犯していたのです。
そして、そうした日本の政策は、冷酷な米国のリアリストから、
単なる「バンドワゴニング」に過ぎない、と足元を見透かされているのです。

その2点とは、

(1)日本はアングロサクソン(米英)についていれば大丈夫。

(2)米国は「民主制度」と「法治」、「人権」を重んずる日本を信頼し、
   一党独裁の共産主義中国を嫌っている。

ということです。

まず、(1)については、
日英同盟時も上手くいった。だから、これからも米国についてゆけば大丈夫!
万事問題ないというものです。

しかし、我が日本が戦後60年間、幸いにして戦争に巻き込まれなかったのは、
ほとんど偶然の産物であったということは、強く認識しておく必要があります。

米国は国益に係わることならば、いとも簡単に「友達」を切り捨て、裏切る国である。
国論が変われば友好国をあっさり切り捨ててきたことは、これまでの歴史の事実が証明しています。

・日中戦争では、蒋介石を応援しつつも、途中から毛沢東支援にまわった。

・ソ連打倒のためには台湾(中華民国)を切り捨て、中華人民共和国と国交を結んだ。

・ベトナム戦争では出口がみえなくなり、結局南ベトナム支援からあっさり撤退した。

・米国が支援していた南ベトナムは崩壊し、大量の難民があふれ出た。

・イラン・イラク戦争の時、イランが戦争に勝って影響力が拡大することを恐れた米国は、
 サダムフセインに(イラク)に軍事的な支援をした。
 しかし、支援した米国は干渉してこないと思ったフセインは、その後クウェートに侵攻し、
 湾岸戦争、イラク侵攻と2度の戦争で米国に打ちのめされ、最後は米軍に捕まり処刑された。

如何でしょうか?

これでもまだあなたは、アメリカはずっと「友達」でいてくれる!

と思えますか?

次に、(2)についてですが、
欧米メディアなどの報道によれば、米国内における中国の工作員の数は激増しています。
更には、人民解放軍には「政治工作条例」なるものまであります。
彼らは世論戦、心理戦、法律戦からなる「三戦」の任務を与えられ、
まさに今、中国は国策として、米国内で「世論戦」を仕掛けている、というのが冷酷な事実です。

正義や真実でなく、ウソでも現実をつくれると考える中国の
カネも人員もかけたまさに「人海戦術」的な、この国家戦略が功を奏し、
すでに米国世論では「尖閣は日本が強奪した島だ」ということに傾き始めている・・・
この危険な状況を皆さんはご存知でしょうか?

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例えば、韓国との従軍慰安婦問題をみるまでもなく、
日本国内で、いわゆる「保守派」といわれる人達が、
どれだけ「真実」を主張しても、
同じ日本人であるはずの国内左翼勢力がこの外患に呼応するという、
典型的なパターンに陥っている事例は、枚挙に暇がありません。

白州次郎は「日本をプリンシプルのない国」と言いました。
しかし、残念ながら、この分析は現在の日本にも今だに当てはまっているのです。

これらの冷酷な事実を踏まえ、
本サイトで皆さんとともに真剣に考えていきたいのは、以下の2点です。

・日本はいかにして「パワー」を獲得すればいいのか?

・どんな国家像を描き、グランド・ストラテジーを立てればよいのか?

この二つの質問を念頭に据えて、米国のリアリスト思考を学び、
日本におけるリアリスト思考を広げ、リアリスト学派をつくっていく。

これが、このサイト、www.realist.jpの目的です。
あなたも是非議論に加わって下さい。



リアリスト思考を最初に日本にもたらした、
シカゴ学派、元フーバー研究所上席研究員、故・片岡鉄哉先生に捧ぐ

日本がこのままの状態でいけば、
少なくとも十年以内に、二流、三流の地位まで確実に堕ちていくことになる。
現在の日本の状況を冷静に見れば、
どう考えてもそういう結論しか出てこないのだ。
しかし、日本はそのまま堕ちっぱなしというわけではない。

何年後になるかわからないが、日本はしぶとく復活するはずである。
国家というのはいつまでも堕ちっぱなしということはなく、
反省して自覚した国民が生まれ、それが国を復興することになるからである。

そのときに、決定的に必要となつてくるのが「理想」である。

地政学の祖であるマッキンダーは、
「人類を導くことができるのは、ただ理想の持つ魅力だけだ」
と言っている。

しかし彼は、同時に現実を冷静に見る目を
忘れてはならないことを鋭く警告している。
それが地理と歴史を冷静に分析した、
地政学という学問が与えてくれる視点なのである。
彼が一九一九年に発表した『デモクラシーの理想と現実』
という本の題名は、このような理想と現実のバランスの大切さを訴えている。

世界はこれから「カオス化」していく。
これはつまり、世界はこれからますます複雑化した
先の見えない場になるということである。

そして日本は、「カオス化」された状況の中で
自立を目指さなければならないし、
むしろ自立せざるを得ない状況に追い込まれることになるかもしれない。
そして、その中で世界に伍していくためには、
日本人は何よりもまず、リアリズムの思考法を身につけなければならない。

日本人は自分で責任を持って戦略を考えるという思考を捨ててしまい、
安易に平和的な解決だけを求めるという体質が染みついてしまった。
たとえば、外交における戦略も「善か悪か」で判断するため、
善を探そうとするあまり、次の一手がどうしても遅くなる。

しかも、日本が「善かれ」と思って世界に主張したことは、
まずもって善として見られていない。
他国はリアリズムの視点で「日本が何を狙っているのか」
と冷酷に見ているのだ。
だからこそ、わが国も外交戦略を「善悪」ではなく、
「強弱」で見るように訓練しなければならない。
「強弱」とは、現在わが国にとって、
この政策は他国と比べて立場を強めてくれるのか
弱めるものかという冷静な判断である。

弱いのであれば、より強い政策を打ち出さなければならないし、
強いものであれば、政策をより国益に近づけなければならない。
こうしたリアリズムの思考を身につけることは、
むしろ「国際的なマナー」なのである。