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地政学を英国で学んだ
しばらくお待ち下さい。
2013年02月16日 日本のリアリスト・故片岡鉄哉先生の思想 (1/2)

共同管理人の和田です。

最近、"アベノミクス"のこともあり、
円安になり、株式市場も盛り上がっています。
これではイヤなんですが、消費税増税になるでしょう。

では、このまま日本経済が順調に回復したとして、
安倍首相が守ろうとしているものはなんでしょうか?

更に言えば、
日本の政治家が守らないといけないものとは何でしょうか?

つまり、
日本が国家として構築すべき「戦略」とは何か?
「日本が目指す価値」とは何なのか?

今回は、「日本国の戦略の階層」について
現在の奥山先生にバトンタッチする前の初代「アメ通」主筆であり、
日本が誇る貴重な「リアリスト」であった、
故片岡鉄哉先生の思想を追想しながら、
読者の皆さんと考えてみたいと思います。

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▼片岡鉄哉 略歴 
1933年、栃木県に生まれ。元スタンフォード大学フーバー研究所研究員。
早稲田大学政経学部卒業。シカゴ大学大学院政治学部博士課程修了。
1969年ニューヨーク州立大学政治学部助教授、
1982年筑波大学歴史・人類学系教授に就任。
1984年スミソニアン・インステテューション Woodrow Wilson Center fellow
等、歴任。
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この「アメ通」の古くからの読者の皆さんには、
お馴染みと言いますか、私がここで敢えてご紹介するまでもありませんね。

-:-:-:-:-:-:-

『月刊WiLL』誌の2月号で、
潮匡人氏が孫崎享氏の著書や発言について批判していました。

その記事の中で、潮氏は、
「媚中・孫崎氏の守りたい価値とはなんなのか、見えてこない」とし、
「"日本語の伝統"と"皇室"こそが日本の守るべき価値である」
と書いていました。

これには私も同感で、これこそが、
長い歴史の中で、日本が独立を保った"証"となる「価値」です。

日本が、その他の文明との違いを証明する際には、
やはり、「日本語の伝統」と「皇室」がその核心になります。
有史以来ずっと続いてきているわけですから、
これが無くなってしまえば、「日本」ではなくなってしまうわけです。

これまでに何度かご紹介している渡部昇一先生は、
日本の独自性を証明するものは「皇室」と「神社」
と言っています。なるほど、これも他の国にはないものです。

中国には、ヨーロッパ諸国以上に言語体系があるのですが、
表記としては漢字で統一しています。
そのため、中国人の言い分としては、
話し言葉がほとんど通じなくとも漢字圏であれば、
そこは中国なのである、と強弁する傾向があるように見受けられます。

そういうわけで、「日本語」という言語であっても、
文字表記の一部に漢字を使っている以上、
中国側からすると、「日本は中華圏の一部である」
などという、私たち日本人一般からすれば、
トンデモ?!説とも思われるような主張さえあります...

しかし、先程も触れたように、
日本には有史以前から続く「神社」と
神話の世界から悠久に続く「皇室」があります。
これは中国から侵されたことはなく、
2,000年という長きに渡り存続していることは
否定のしようがありません。

世界的大ベストセラー『文明の衝突』を著した、
S・ハンチントン教授は、この本の中で、
世界の8大文明というものを提起して、
その中で、日本は一国のみで成立する孤立文明、
としています。

日本は中国の属国だった、などと言い放つ
困った評論家の人もいるようですが、
それは、これまで私がお話してきたことを、
素朴に考えてみても、非常にナンセンスですね。

-:-:-:-:-:-:-

日本の価値とは、日本の価値を守るという話を
展開するために、片岡先生のことに触れる前に、
長くなりました

ということで、この話は明日に続けようと思います。
しばしお待ち下さい。

( 共同管理人 和田 )

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技術を制するのは高度な技術ではない。より上流階層からルール決めには対抗できない。
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さて、早速ですが、・ネオコンをはじめとする勢力が狙ってきた米国の世界一極覇権支配は、長くは続かない。・中国が膨張し、アジアの覇権をねらい、世界は多極構造になる。 90年代から上記のように予想し、米国内でも論争してきたのがリアリスト学派です。

リアリスト学派は、国家のパワー(軍事力、政治力、人口規模、経済力等)がもっとも大事な要素と考え、

正義やイデオロギー、理念は関係ない。国際関係はパワーで決まり、パワーを予測し戦略を立てよう

と考える学派で、19世紀の英国の行ったバランス・オブ・パワーを活用した大戦略を信条とします。

ところが「リアリスト」を自認する日本の親米保守派は、
「経済中心主義」で「安保無料(だだ)乗り」をし続けていますが、
実は、彼らは、以下の2点で決定的、かつ、致命的な誤りを犯していたのです。
そして、そうした日本の政策は、冷酷な米国のリアリストから、
単なる「バンドワゴニング」に過ぎない、と足元を見透かされているのです。

その2点とは、

(1)日本はアングロサクソン(米英)についていれば大丈夫。

(2)米国は「民主制度」と「法治」、「人権」を重んずる日本を信頼し、
   一党独裁の共産主義中国を嫌っている。

ということです。

まず、(1)については、
日英同盟時も上手くいった。だから、これからも米国についてゆけば大丈夫!
万事問題ないというものです。

しかし、我が日本が戦後60年間、幸いにして戦争に巻き込まれなかったのは、
ほとんど偶然の産物であったということは、強く認識しておく必要があります。

米国は国益に係わることならば、いとも簡単に「友達」を切り捨て、裏切る国である。
国論が変われば友好国をあっさり切り捨ててきたことは、これまでの歴史の事実が証明しています。

・日中戦争では、蒋介石を応援しつつも、途中から毛沢東支援にまわった。

・ソ連打倒のためには台湾(中華民国)を切り捨て、中華人民共和国と国交を結んだ。

・ベトナム戦争では出口がみえなくなり、結局南ベトナム支援からあっさり撤退した。

・米国が支援していた南ベトナムは崩壊し、大量の難民があふれ出た。

・イラン・イラク戦争の時、イランが戦争に勝って影響力が拡大することを恐れた米国は、
 サダムフセインに(イラク)に軍事的な支援をした。
 しかし、支援した米国は干渉してこないと思ったフセインは、その後クウェートに侵攻し、
 湾岸戦争、イラク侵攻と2度の戦争で米国に打ちのめされ、最後は米軍に捕まり処刑された。

如何でしょうか?

これでもまだあなたは、アメリカはずっと「友達」でいてくれる!

と思えますか?

次に、(2)についてですが、
欧米メディアなどの報道によれば、米国内における中国の工作員の数は激増しています。
更には、人民解放軍には「政治工作条例」なるものまであります。
彼らは世論戦、心理戦、法律戦からなる「三戦」の任務を与えられ、
まさに今、中国は国策として、米国内で「世論戦」を仕掛けている、というのが冷酷な事実です。

正義や真実でなく、ウソでも現実をつくれると考える中国の
カネも人員もかけたまさに「人海戦術」的な、この国家戦略が功を奏し、
すでに米国世論では「尖閣は日本が強奪した島だ」ということに傾き始めている・・・
この危険な状況を皆さんはご存知でしょうか?

-*- -*-

例えば、韓国との従軍慰安婦問題をみるまでもなく、
日本国内で、いわゆる「保守派」といわれる人達が、
どれだけ「真実」を主張しても、
同じ日本人であるはずの国内左翼勢力がこの外患に呼応するという、
典型的なパターンに陥っている事例は、枚挙に暇がありません。

白州次郎は「日本をプリンシプルのない国」と言いました。
しかし、残念ながら、この分析は現在の日本にも今だに当てはまっているのです。

これらの冷酷な事実を踏まえ、
本サイトで皆さんとともに真剣に考えていきたいのは、以下の2点です。

・日本はいかにして「パワー」を獲得すればいいのか?

・どんな国家像を描き、グランド・ストラテジーを立てればよいのか?

この二つの質問を念頭に据えて、米国のリアリスト思考を学び、
日本におけるリアリスト思考を広げ、リアリスト学派をつくっていく。

これが、このサイト、www.realist.jpの目的です。
あなたも是非議論に加わって下さい。



リアリスト思考を最初に日本にもたらした、
シカゴ学派、元フーバー研究所上席研究員、故・片岡鉄哉先生に捧ぐ

日本がこのままの状態でいけば、
少なくとも十年以内に、二流、三流の地位まで確実に堕ちていくことになる。
現在の日本の状況を冷静に見れば、
どう考えてもそういう結論しか出てこないのだ。
しかし、日本はそのまま堕ちっぱなしというわけではない。

何年後になるかわからないが、日本はしぶとく復活するはずである。
国家というのはいつまでも堕ちっぱなしということはなく、
反省して自覚した国民が生まれ、それが国を復興することになるからである。

そのときに、決定的に必要となつてくるのが「理想」である。

地政学の祖であるマッキンダーは、
「人類を導くことができるのは、ただ理想の持つ魅力だけだ」
と言っている。

しかし彼は、同時に現実を冷静に見る目を
忘れてはならないことを鋭く警告している。
それが地理と歴史を冷静に分析した、
地政学という学問が与えてくれる視点なのである。
彼が一九一九年に発表した『デモクラシーの理想と現実』
という本の題名は、このような理想と現実のバランスの大切さを訴えている。

世界はこれから「カオス化」していく。
これはつまり、世界はこれからますます複雑化した
先の見えない場になるということである。

そして日本は、「カオス化」された状況の中で
自立を目指さなければならないし、
むしろ自立せざるを得ない状況に追い込まれることになるかもしれない。
そして、その中で世界に伍していくためには、
日本人は何よりもまず、リアリズムの思考法を身につけなければならない。

日本人は自分で責任を持って戦略を考えるという思考を捨ててしまい、
安易に平和的な解決だけを求めるという体質が染みついてしまった。
たとえば、外交における戦略も「善か悪か」で判断するため、
善を探そうとするあまり、次の一手がどうしても遅くなる。

しかも、日本が「善かれ」と思って世界に主張したことは、
まずもって善として見られていない。
他国はリアリズムの視点で「日本が何を狙っているのか」
と冷酷に見ているのだ。
だからこそ、わが国も外交戦略を「善悪」ではなく、
「強弱」で見るように訓練しなければならない。
「強弱」とは、現在わが国にとって、
この政策は他国と比べて立場を強めてくれるのか
弱めるものかという冷静な判断である。

弱いのであれば、より強い政策を打ち出さなければならないし、
強いものであれば、政策をより国益に近づけなければならない。
こうしたリアリズムの思考を身につけることは、
むしろ「国際的なマナー」なのである。