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地政学を英国で学んだ
しばらくお待ち下さい。
2013年02月17日 日本のリアリスト・故片岡鉄哉先生の思想 (2/2)

共同管理人の和田です。

昨日の続きです。

日本が守るべき価値から、
「皇室」や「神社」を外すことは出来ません。
よって、当然、、皇室典範のあり方や、
靖国神社への参拝のあり方が、
今後の日本の守るべきものになるのです。

厄介なことに、日本の国家破壊を企む、いわゆる左翼勢力や、
明らかに東アジアでの地域覇権を狙っている中国などは、
このことがよくわかっています。

なので、彼らの息のかかっている人間は、
日本人であるのに、首相の靖国参拝に反対したり、
皇統維持のために、旧宮家が皇族に復帰することに
反対したりするわけです。

あの強大なパワーを持つアメリカですら、
さすがに、イスラム教そのものには介入できません。
そもそも、他国の宗教観に介入すること自体がおかしなことで、
日本はこの点を堂々と主張すべきなのです。

この「アメリカ通信」の創刊者、故・片岡鉄哉先生は
小泉ーブッシュ時代に「A級戦犯を靖国から分祀しろ」
と主張していました。

"ゴリゴリ"の保守思想家であった片岡先生だけに
周りを驚かせていました。

では、片岡先生はなぜ、そのような主張をされていたのでしょうか?

-:-:-:-:-:-:-

今後の日米同盟を真の意味で強化するためには、
ブッシュ大統領が靖国に参拝することが非常に重要であり、
あの当時、アメリカ側にもその機運があることを、
片岡先生は鋭く"読み切って"いました。

なので、日本とアメリカが烈しく戦った象徴とも言える、
いわゆる"A級戦犯"が靖国神社に祀られていると、
ブッシュ大統領の「靖国参拝」は難しいだろう、と
「リアリスト」としての視点で、片岡先生は冷静に考えたのでした。

実際の話として、いわゆる「分祀」などしていない、あの当時の段階で、
ブッシュ大統領側から、靖国参拝オファーはあったのです。
この時は、外務省の反対により、
靖国神社ではなく、ブッシュ大統領のみが
明治神宮に参拝したことは、読者の皆さんの中には、
記憶されている方もいるのではないでしょうか。
ちなみに、この時、小泉首相はクルマの中で待っていたようですが...。

この件については、当時、「有料版アメ通」にても配信しましたが、
まさに、片岡先生の読み通り、
アメリカ側には、そういう"機運"があったわけです。

当時の小泉首相は、どちらかと言うと、
"政争の具"として、靖国参拝を主張していたようなフシがありました。

実際、皇室典範改悪などにも着手していたように、
彼自身が、日本の守るべき価値として、
「皇室」や「神社」の存在を認識していたのかどうか?
という点は、少々怪しかったのではないかな?
と、私は少々残念に思っています。

神道側からの主張として、
「日本の神社に分祀という概念はない。一度合祀したら分祀できない」
という主張もありました。
「みたま分け」といって、霊は分けていけるが、
一度合祀された霊は残るというものでした。

また当時の「靖国論争」において、保守論壇の立場からは、
「A級戦犯そのものが、もはや存在しないのだ」
という主張もありました。

これは、一面ではその通りでもあるのですが、
ここで片岡先生の主張のポイントは、
「そんなことはテクニック論であり、重要でないものだ」
ということでした。

いわゆる"A級戦犯論争"や、"分祀"論争といったものは、
「戦術」レベルの話であり、
""日米同盟強化""と""改憲""こそが「戦略」そのものだ、
としていたからです。
「さっさと分祀したことにしてブッシュを誘え」
というものでした。

無論、片岡先生は保守思想家ではあったのですが、
日本人としては極めて貴重な、
生粋の「リアリスト」でもあったのです。

-:-:-:-:-:-:-

片岡先生の思考法はこうでした。

--
どうせアメリカ人に合祀や神道の理論を話しても意味が無い(笑)。
A級戦犯の霊を外したことにすればいい。
(神道的には外せないならば、それでなお良いではないか。)
(しかし、そもそも、平将門の霊など引きぬいて、移動しているではないのか。)

確かに、日本にA級戦犯は存在しないが、米国側には存在する。
この件で本気でプロパガンダをやって時間をかけている暇はないし、
これだともとの木阿弥で、
日米合意は遠のき、勝ち目がなくなってしまう。

いわゆるA級戦犯問題を伴う、東京裁判論争は
ここでは一旦棚上げにするのがよい。
日本の保守派は、苦手なくせに、
ついこの「プロパガンダ」論争をやってしまう。

しかし、これは「戦術」レベルの話である、と認識すればいいのだ。
ブッシュが靖国神社に参拝してしまえば、
この問題には一気にケリが付いてしまうではないか。
--

私は、このお話を、片岡先生から、
直接よくお聞きしていたのでよく分かりますが、
今、思い起こしてみても、
本当に片岡先生は"ゴリゴリ"の「リアリスト」でした。(笑)

-:-:-:-:-:-:-

米国の大統領が靖国神社に参拝したという「事実」が
大きな未来を約束するものだとしたのです。
イラク戦争に苦しむブッシュに、いの一番に支援表明した小泉純一郎だからこそできた、
(こういう場面での、小泉首相の"本能的"嗅覚はスゴい)
米国の信託による、戦後の日本の国防政策転換の最大のチャンスだったのです。

改憲まで持ってゆくことすら可能だったのです。
片岡先生の分析によると、米国から日本の改憲が許されたのは、
戦後たった2回しかなかったとのことですが、
あの時は、その2度目の大チャンスだったのです。

米国はソ連を見事に封じ込めたあと、
バブルに湧いていた日本を封じ込んでいました。

勃興する中国の経済成長を利用しようとする米国と、
強力な政治・外交力を持つ中国の狭間で、
日本は完全に未来永劫、ビル(米中)の谷間のラーメン屋になる...

片岡先生は、冷酷にそう指摘していました。
その予想通り、日米の接近はそのワンチャンスのみで、
ブッシュ政権の二期目からは、その関心・興味はすっかり中国に移り、
日本の低迷が続きました。

米中間に合意が出来てしまえば、
日本はもう"改憲"も"核武装"もできなくなり、
それはつまり、「神社」も「皇室」も守れなくなるということだ、
という見解でした。
あの時、そこまでの米中合意には至らなかったというのは、
日本国にとっては、本当に幸運なことだったと改めて思います。

-:-:-:-:-:-:-

今後数十年は、日米中の関係が
更にめまぐるしく変わってくることは必定であり、
まったく油断は出来ません。

このような時代であるからこそ、何を大事な「価値」として考えるか、
それを踏まえて何を「戦略」として重要視していくのか?
ということは、政治家だけでなく、
私たち一人一人が真剣に考えるべきタイミングなのではないと思っています。

今回は日本の価値を考えながらも
保守派論客とはひと味もふた味も違った、
日本が誇る真のリアリスト、故片岡鉄哉先生の思考法について紹介しました。

「リアリスト」や「リアリズム」について、さらに興味が湧きましたら、
以下もぜひ御覧になってみて下さい。

↓↓↓

http://www.realist.jp/walt-cd.html

( 共同管理人 和田 )

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さて、早速ですが、・ネオコンをはじめとする勢力が狙ってきた米国の世界一極覇権支配は、長くは続かない。・中国が膨張し、アジアの覇権をねらい、世界は多極構造になる。 90年代から上記のように予想し、米国内でも論争してきたのがリアリスト学派です。

リアリスト学派は、国家のパワー(軍事力、政治力、人口規模、経済力等)がもっとも大事な要素と考え、

正義やイデオロギー、理念は関係ない。国際関係はパワーで決まり、パワーを予測し戦略を立てよう

と考える学派で、19世紀の英国の行ったバランス・オブ・パワーを活用した大戦略を信条とします。

ところが「リアリスト」を自認する日本の親米保守派は、
「経済中心主義」で「安保無料(だだ)乗り」をし続けていますが、
実は、彼らは、以下の2点で決定的、かつ、致命的な誤りを犯していたのです。
そして、そうした日本の政策は、冷酷な米国のリアリストから、
単なる「バンドワゴニング」に過ぎない、と足元を見透かされているのです。

その2点とは、

(1)日本はアングロサクソン(米英)についていれば大丈夫。

(2)米国は「民主制度」と「法治」、「人権」を重んずる日本を信頼し、
   一党独裁の共産主義中国を嫌っている。

ということです。

まず、(1)については、
日英同盟時も上手くいった。だから、これからも米国についてゆけば大丈夫!
万事問題ないというものです。

しかし、我が日本が戦後60年間、幸いにして戦争に巻き込まれなかったのは、
ほとんど偶然の産物であったということは、強く認識しておく必要があります。

米国は国益に係わることならば、いとも簡単に「友達」を切り捨て、裏切る国である。
国論が変われば友好国をあっさり切り捨ててきたことは、これまでの歴史の事実が証明しています。

・日中戦争では、蒋介石を応援しつつも、途中から毛沢東支援にまわった。

・ソ連打倒のためには台湾(中華民国)を切り捨て、中華人民共和国と国交を結んだ。

・ベトナム戦争では出口がみえなくなり、結局南ベトナム支援からあっさり撤退した。

・米国が支援していた南ベトナムは崩壊し、大量の難民があふれ出た。

・イラン・イラク戦争の時、イランが戦争に勝って影響力が拡大することを恐れた米国は、
 サダムフセインに(イラク)に軍事的な支援をした。
 しかし、支援した米国は干渉してこないと思ったフセインは、その後クウェートに侵攻し、
 湾岸戦争、イラク侵攻と2度の戦争で米国に打ちのめされ、最後は米軍に捕まり処刑された。

如何でしょうか?

これでもまだあなたは、アメリカはずっと「友達」でいてくれる!

と思えますか?

次に、(2)についてですが、
欧米メディアなどの報道によれば、米国内における中国の工作員の数は激増しています。
更には、人民解放軍には「政治工作条例」なるものまであります。
彼らは世論戦、心理戦、法律戦からなる「三戦」の任務を与えられ、
まさに今、中国は国策として、米国内で「世論戦」を仕掛けている、というのが冷酷な事実です。

正義や真実でなく、ウソでも現実をつくれると考える中国の
カネも人員もかけたまさに「人海戦術」的な、この国家戦略が功を奏し、
すでに米国世論では「尖閣は日本が強奪した島だ」ということに傾き始めている・・・
この危険な状況を皆さんはご存知でしょうか?

-*- -*-

例えば、韓国との従軍慰安婦問題をみるまでもなく、
日本国内で、いわゆる「保守派」といわれる人達が、
どれだけ「真実」を主張しても、
同じ日本人であるはずの国内左翼勢力がこの外患に呼応するという、
典型的なパターンに陥っている事例は、枚挙に暇がありません。

白州次郎は「日本をプリンシプルのない国」と言いました。
しかし、残念ながら、この分析は現在の日本にも今だに当てはまっているのです。

これらの冷酷な事実を踏まえ、
本サイトで皆さんとともに真剣に考えていきたいのは、以下の2点です。

・日本はいかにして「パワー」を獲得すればいいのか?

・どんな国家像を描き、グランド・ストラテジーを立てればよいのか?

この二つの質問を念頭に据えて、米国のリアリスト思考を学び、
日本におけるリアリスト思考を広げ、リアリスト学派をつくっていく。

これが、このサイト、www.realist.jpの目的です。
あなたも是非議論に加わって下さい。



リアリスト思考を最初に日本にもたらした、
シカゴ学派、元フーバー研究所上席研究員、故・片岡鉄哉先生に捧ぐ

日本がこのままの状態でいけば、
少なくとも十年以内に、二流、三流の地位まで確実に堕ちていくことになる。
現在の日本の状況を冷静に見れば、
どう考えてもそういう結論しか出てこないのだ。
しかし、日本はそのまま堕ちっぱなしというわけではない。

何年後になるかわからないが、日本はしぶとく復活するはずである。
国家というのはいつまでも堕ちっぱなしということはなく、
反省して自覚した国民が生まれ、それが国を復興することになるからである。

そのときに、決定的に必要となつてくるのが「理想」である。

地政学の祖であるマッキンダーは、
「人類を導くことができるのは、ただ理想の持つ魅力だけだ」
と言っている。

しかし彼は、同時に現実を冷静に見る目を
忘れてはならないことを鋭く警告している。
それが地理と歴史を冷静に分析した、
地政学という学問が与えてくれる視点なのである。
彼が一九一九年に発表した『デモクラシーの理想と現実』
という本の題名は、このような理想と現実のバランスの大切さを訴えている。

世界はこれから「カオス化」していく。
これはつまり、世界はこれからますます複雑化した
先の見えない場になるということである。

そして日本は、「カオス化」された状況の中で
自立を目指さなければならないし、
むしろ自立せざるを得ない状況に追い込まれることになるかもしれない。
そして、その中で世界に伍していくためには、
日本人は何よりもまず、リアリズムの思考法を身につけなければならない。

日本人は自分で責任を持って戦略を考えるという思考を捨ててしまい、
安易に平和的な解決だけを求めるという体質が染みついてしまった。
たとえば、外交における戦略も「善か悪か」で判断するため、
善を探そうとするあまり、次の一手がどうしても遅くなる。

しかも、日本が「善かれ」と思って世界に主張したことは、
まずもって善として見られていない。
他国はリアリズムの視点で「日本が何を狙っているのか」
と冷酷に見ているのだ。
だからこそ、わが国も外交戦略を「善悪」ではなく、
「強弱」で見るように訓練しなければならない。
「強弱」とは、現在わが国にとって、
この政策は他国と比べて立場を強めてくれるのか
弱めるものかという冷静な判断である。

弱いのであれば、より強い政策を打ち出さなければならないし、
強いものであれば、政策をより国益に近づけなければならない。
こうしたリアリズムの思考を身につけることは、
むしろ「国際的なマナー」なのである。