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地政学を英国で学んだ
しばらくお待ち下さい。
2013年02月18日 「ヲタク」戦士が戦争を変える!?

すっかりご無沙汰してしまっております。
おくやまです。

先日、すこしブログのほうでも書きましたが、
本日発売の新刊に、

『Warrior Geeks:
 How 21st Century Technology is Changing the Way
  We Fight and Think About War』 by Christopher Coker

http://www.amazon.com/Warrior-Geeks-Technology-Changing-Columbia/dp/0231704089

という英語の本があります。

この本のタイトルを直訳すると、

『戦士のヲタクたち:
  21世紀のテクノロジーは戦争の闘いかたと考え方をどのように変えるのか』

となるわけですが、実は、私はこの本のタイトルのアイデアを相談されておりました。

すでに書いたように、二年前の秋に、元コースメイトが主宰した学会に招かれ、
バングラデシュに行きました。
もちろん、私も講演したわけですが、たまたま、イギリスからこの本の著者である、
この教授も参加されておりまして、その時に

「いま新刊を書いているんだが、その題名を考えているんだ。どれがいいか意見をくれ」

と尋ねられました。

この教授からは、この『Warrior Geeks』というタイトルと、
もうひとつの案として、『From Greeks to Geeks( ギリシャ人からヲタクへ )』
というアイデアもある、と聞きました。

私としては、この二番目の候補を大プッシュしたわけですが、
残念ながら「当選」したのは前者のタイトル案だったようです。

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わたしが推した『From Greeks to Geeks』
というフレーズに"妙味"がありまして、実はここが極めて重要なのです。

なぜこのような奇妙な名前になっているのかというと、

かつて、ギリシャ人(Greeks)は伝統的に、
強靭な肉体を持つ戦士(wariorr)を、称える文化を持っていたわけです。
しかし、現代の戦争における「戦士」というのは、
オバマ政権が積極的に採用しているような「無人機」を操作する人間、
または、「サイバーウォーズ」における、いわゆる"ハッカー"と呼ばれる人達、
つまり、ヲタク(Geeks)に変化してきている・・・。

と、このような意味合いがあるわけです。

これがちょっと前ですと、英米における「ヲタク」という言葉が含むニュアンスといえば、
やはり「キモイ...」という感じで、あまりポジティブなイメージはなかったわけです。

しかし、最近はアフガニスタンやイラクなど、現代の戦争における社会的な要請(?)のほか、
インターネットが普及した社会状況、それにヲタクを賞賛する映画がヒットしたことなどもあり、
Geeksという言葉が、どちらかというポジティブなイメージに変化してきております。

これは日本でも似たような面があり、
例えば、ヲタク的な文脈やニュアンスを含むイベントが街興しなどに繋がった事例や、
当初は、一部のコアなヲタク向けのアイドルであったAKB48が、
あれよあれよという間に、メジャーになってしまったのもその一例です。

この『Warrior Geeks』という本の具体的な内容については、
私もまだ読んでいないので、詳細をここで書くことは出来ませんが、
以前からこの先生が述べていたことや、前書きなどの説明から、
この本の概要は分かりました。

それは、戦争における「テクノロジー」の変化が、
われわれの「人間性」に大きな変化を与える、
ということへの懸念を、様々な哲学的な議論から考察しているようです。

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この「テクノロジー」の変化ということについてですが、この本では、

「サイボーグ化する兵士」
「ロボットと生身の人間が一緒に戦うこと」
「製薬技術の発展による兵士を強化」

という三つの点から考察されています。

ここで重要なポイントになるのは、
われわれの生活が「サイボーグ化」している、という認識。

「人間がサイボーグなわけがない!」というのが、
われわれの一般的な認識かもしれませんが、この本の議論によれば、
サイボーグというのは、
「身体の機能をコンピュターのような人工物に代替させたもの」
という定義であるので、その意味においては、
現代人はすでに「サイボーグ化」している、ということになります。

もはや、すっかり私たちの日常に定着している携帯電話などはそのいい例で、
最近では、いわゆる「スマホ」が爆発的に普及しています。
これは、電話というより、小さなパソコンと言ってもよいほどのガジェットであり、
私たちの生活を支える、コミュニケーションの基盤、
とも言える存在にまで進化を遂げています。

日本では、一般的に、「テクノロジー」のことを「技術」と訳しているようです。
そのせいで、人間社会との密接な関係性をリアルには感じられないかもしれませんが、
実は、「テクノロジー」が、人間を人間たらしてめている「本質」(human nature)
そのものを変えてきております。

現代の戦争の形態、ビジネスの現場、そして社会情勢、
言うなれば、私たちの「文化」そのものに、
この「変化した人間性」が如実に現れているわけです。

かつて、ギリシャ時代には、
都市を守る強靭な「戦士」の文化が尊ばれたが、
今や、それは現代戦の担い手となった、
「オタク」の文化に取って替わられてしまったのではないか?

そういう問題提起がこの本のテーマであると言えるわけです。

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さて、それでは、皆さん、
ギリシャ時代とはすっかり変化してしまった、この現代社会で、
錯綜している"現場"をズバッ!と切り拓く「ヲタク」として、
(そうです、かのスティーブ・ジョブスのように!)
本当に成功するためには、果たしてどうすれば良いものでしょうか。

この点について、私が出した解答。それは「引きこもる」こと。

この「引きこもる」ことの効用について、
2時間半にわたって、みっちりと説いたCDを作りました。
ぜひとも聴いてみて頂きたいな、と思っている次第です。

ご興味ありましたら、こちらからご確認下さい。

http://www.realist.jp/cumseq.html

( おくやま )

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戦略を語れない人生は奴隷だ

技術を制するのは高度な技術ではない。より上流階層からルール決めには対抗できない。
今こそ日本人は「戦略の階層」を学び、その全体像を理解しなければならない。

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このサイトはリアリズムについて学ぶ人を増やすためのサイトです。

さて、早速ですが、・ネオコンをはじめとする勢力が狙ってきた米国の世界一極覇権支配は、長くは続かない。・中国が膨張し、アジアの覇権をねらい、世界は多極構造になる。 90年代から上記のように予想し、米国内でも論争してきたのがリアリスト学派です。

リアリスト学派は、国家のパワー(軍事力、政治力、人口規模、経済力等)がもっとも大事な要素と考え、

正義やイデオロギー、理念は関係ない。国際関係はパワーで決まり、パワーを予測し戦略を立てよう

と考える学派で、19世紀の英国の行ったバランス・オブ・パワーを活用した大戦略を信条とします。

ところが「リアリスト」を自認する日本の親米保守派は、
「経済中心主義」で「安保無料(だだ)乗り」をし続けていますが、
実は、彼らは、以下の2点で決定的、かつ、致命的な誤りを犯していたのです。
そして、そうした日本の政策は、冷酷な米国のリアリストから、
単なる「バンドワゴニング」に過ぎない、と足元を見透かされているのです。

その2点とは、

(1)日本はアングロサクソン(米英)についていれば大丈夫。

(2)米国は「民主制度」と「法治」、「人権」を重んずる日本を信頼し、
   一党独裁の共産主義中国を嫌っている。

ということです。

まず、(1)については、
日英同盟時も上手くいった。だから、これからも米国についてゆけば大丈夫!
万事問題ないというものです。

しかし、我が日本が戦後60年間、幸いにして戦争に巻き込まれなかったのは、
ほとんど偶然の産物であったということは、強く認識しておく必要があります。

米国は国益に係わることならば、いとも簡単に「友達」を切り捨て、裏切る国である。
国論が変われば友好国をあっさり切り捨ててきたことは、これまでの歴史の事実が証明しています。

・日中戦争では、蒋介石を応援しつつも、途中から毛沢東支援にまわった。

・ソ連打倒のためには台湾(中華民国)を切り捨て、中華人民共和国と国交を結んだ。

・ベトナム戦争では出口がみえなくなり、結局南ベトナム支援からあっさり撤退した。

・米国が支援していた南ベトナムは崩壊し、大量の難民があふれ出た。

・イラン・イラク戦争の時、イランが戦争に勝って影響力が拡大することを恐れた米国は、
 サダムフセインに(イラク)に軍事的な支援をした。
 しかし、支援した米国は干渉してこないと思ったフセインは、その後クウェートに侵攻し、
 湾岸戦争、イラク侵攻と2度の戦争で米国に打ちのめされ、最後は米軍に捕まり処刑された。

如何でしょうか?

これでもまだあなたは、アメリカはずっと「友達」でいてくれる!

と思えますか?

次に、(2)についてですが、
欧米メディアなどの報道によれば、米国内における中国の工作員の数は激増しています。
更には、人民解放軍には「政治工作条例」なるものまであります。
彼らは世論戦、心理戦、法律戦からなる「三戦」の任務を与えられ、
まさに今、中国は国策として、米国内で「世論戦」を仕掛けている、というのが冷酷な事実です。

正義や真実でなく、ウソでも現実をつくれると考える中国の
カネも人員もかけたまさに「人海戦術」的な、この国家戦略が功を奏し、
すでに米国世論では「尖閣は日本が強奪した島だ」ということに傾き始めている・・・
この危険な状況を皆さんはご存知でしょうか?

-*- -*-

例えば、韓国との従軍慰安婦問題をみるまでもなく、
日本国内で、いわゆる「保守派」といわれる人達が、
どれだけ「真実」を主張しても、
同じ日本人であるはずの国内左翼勢力がこの外患に呼応するという、
典型的なパターンに陥っている事例は、枚挙に暇がありません。

白州次郎は「日本をプリンシプルのない国」と言いました。
しかし、残念ながら、この分析は現在の日本にも今だに当てはまっているのです。

これらの冷酷な事実を踏まえ、
本サイトで皆さんとともに真剣に考えていきたいのは、以下の2点です。

・日本はいかにして「パワー」を獲得すればいいのか?

・どんな国家像を描き、グランド・ストラテジーを立てればよいのか?

この二つの質問を念頭に据えて、米国のリアリスト思考を学び、
日本におけるリアリスト思考を広げ、リアリスト学派をつくっていく。

これが、このサイト、www.realist.jpの目的です。
あなたも是非議論に加わって下さい。



リアリスト思考を最初に日本にもたらした、
シカゴ学派、元フーバー研究所上席研究員、故・片岡鉄哉先生に捧ぐ

日本がこのままの状態でいけば、
少なくとも十年以内に、二流、三流の地位まで確実に堕ちていくことになる。
現在の日本の状況を冷静に見れば、
どう考えてもそういう結論しか出てこないのだ。
しかし、日本はそのまま堕ちっぱなしというわけではない。

何年後になるかわからないが、日本はしぶとく復活するはずである。
国家というのはいつまでも堕ちっぱなしということはなく、
反省して自覚した国民が生まれ、それが国を復興することになるからである。

そのときに、決定的に必要となつてくるのが「理想」である。

地政学の祖であるマッキンダーは、
「人類を導くことができるのは、ただ理想の持つ魅力だけだ」
と言っている。

しかし彼は、同時に現実を冷静に見る目を
忘れてはならないことを鋭く警告している。
それが地理と歴史を冷静に分析した、
地政学という学問が与えてくれる視点なのである。
彼が一九一九年に発表した『デモクラシーの理想と現実』
という本の題名は、このような理想と現実のバランスの大切さを訴えている。

世界はこれから「カオス化」していく。
これはつまり、世界はこれからますます複雑化した
先の見えない場になるということである。

そして日本は、「カオス化」された状況の中で
自立を目指さなければならないし、
むしろ自立せざるを得ない状況に追い込まれることになるかもしれない。
そして、その中で世界に伍していくためには、
日本人は何よりもまず、リアリズムの思考法を身につけなければならない。

日本人は自分で責任を持って戦略を考えるという思考を捨ててしまい、
安易に平和的な解決だけを求めるという体質が染みついてしまった。
たとえば、外交における戦略も「善か悪か」で判断するため、
善を探そうとするあまり、次の一手がどうしても遅くなる。

しかも、日本が「善かれ」と思って世界に主張したことは、
まずもって善として見られていない。
他国はリアリズムの視点で「日本が何を狙っているのか」
と冷酷に見ているのだ。
だからこそ、わが国も外交戦略を「善悪」ではなく、
「強弱」で見るように訓練しなければならない。
「強弱」とは、現在わが国にとって、
この政策は他国と比べて立場を強めてくれるのか
弱めるものかという冷静な判断である。

弱いのであれば、より強い政策を打ち出さなければならないし、
強いものであれば、政策をより国益に近づけなければならない。
こうしたリアリズムの思考を身につけることは、
むしろ「国際的なマナー」なのである。