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地政学を英国で学んだ
しばらくお待ち下さい。
2013年02月19日 「テクノロジー」が大きく変化する時代

共同管理人の和田です。

昨日の奥山さんのお話の内容を受けて、
「テクノロジー」について少し考えてみたいと思います。

▼戦後最大値となった日本のリスク

先日、北朝鮮の核実験やミサイル発射準備というニュースがありました。
また、中国が日本の海自船にレーダー照射してきた事件があります。
現在、日本の巡る安全保障問題は、最高度に危険な状況にあるといえます。

特にこの「レーダー照射」という行為が持つ、
軍事的意味合いというのは、分かりやすく言えば、

"コメカミに拳銃を突きつけ撃鉄を引き起こした状態"

ということです。

もはや、言うまでもありませんが、
これは、洒落や冗談で済まされる範囲を超え、
仮に日中両国の間に"友情"があったとしても、
そんなものは消えてなくなってしまうような、危険な挑発行為です。

民主党など一部の奇特な人以外、ごく普通の真っ当な日本人であれば、
多かれ少なかれ、中国に対しては何らかの猜疑心を抱いている昨今、
こんなことをされたら、中国に対して
敵対的な意識しか残らないのではないでしょうか・・・

人民解放軍の暴走であるかは定かではありませんが、
これは最高度の挑発行為です。
ここで、日本が応じてしまえば、向こうの思う壺で、
すぐに、実際の紛争にまで発展してしまうのではないでしょうか。
(民主党政権時からレーダー照射は行われており、
   野田前首相は、その事実を隠蔽していたようですね・・・。)

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さて、ここは非常に重要なポイントなので、
読者の皆さんにも、日本の歴史を振り返って頂きたいのですが、
昭和12年に起こった、あの「盧溝橋事件」。
これこそが、今回とほぼ同じパターンで起こった紛争です。

丸腰の日本軍に対し中国側が銃撃してきたことをきっかけに、
結果として、日本は中国との泥沼の戦争に引き摺り込まれたわけです。

現状においては、日中間で戦った場合のシュミレーションとして、
それが「紛争」レベルであれば、日本が完全勝利するようです。
しかし、仮に中国側がミサイルを使った攻撃に出てくれば、
日本は、米軍からの支援なくして、防衛はできないでしょう。

そのような事態に陥った場合に、
米軍が、本気で日本のために血を流すかどうかは、
私たち日本人自身が、本気で日本を守る気概があるかどうか?
にかかっていると思います。

いわゆる先進国と比べて「人間の値段」が極端に低い、
人権のない中国のような国と戦う上で、
日本のような人権のある国家の政治家は、最大限に気を使うところです。

世界の先進国では、軍人といえども、人間が死ぬということは、
当たり前のことですが、いろいろと問題がでます。
そのために、危険な地域の危険な任務には傭兵なども雇うわけです。
実際に、米軍内には外国籍の兵士が2万人程度はいるのです。

現代の世界最強国家である米国の市民権が欲しい外国人を雇い、
数年の兵役をこなすと、その人は米国人になれる試験が受けられる、
そういう社会的制度、システムが出来ているわけです。

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「アメ通」を読んでいる皆さんなら、既にご存知かとは思いますが、
このような、市民権獲得を目指して入隊する外国人兵士を使う
ということよりもさらに上をいく、最近の米国の戦略があります。

それが前回アメ通で奥山先生が書いた、無人戦闘機の開発と投入です。

産経新聞にこんな記事がありましたので、一部引用してみます。

(引用はじめ)

「戦争のやり方変わった」 米、無人機運用で勲章新設 前線にいない兵士表彰

パネッタ米国防長官は13日の記者会見で、アフガニスタンでの無人機導入や
コンピューター技術が「(現代の)戦争のやり方を変えた」と述べ、前線にいなくても
著しい"戦果"を挙げた兵士らを表彰する勲章を新設したと発表した。

無人機攻撃に対しては、米国籍のイスラム過激派組織メンバー暗殺に使われたり、
民間人を巻き添えにしたりしているとの批判も出ているが、オバマ政権として、
今後さらに無人機を活用していく姿勢を示した。

無人機攻撃の多くは米本土ネバダ州の空軍基地などから遠隔操作で行われている。

中央情報局(CIA)長官時代にビンラディン殺害作戦を指揮したパネッタ氏は
「(無人機など)現代的な機械が戦い方をいかに変えたかを目の当たりにした」と述べた。
(共同)
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130214/amr13021412090002-n1.htm

(引用おわり)

この記事にはありませんが、米国議会の報告によると、
米軍の軍用機は、今や31%がすでに無人航空機になっているとのことです。
自軍の人命のリスクが、無人機により軽減されるなら、
米軍の無人機導入は、今後ますます増えてゆくことになるでしょう。

このまま、無人攻撃機や偵察機がどんどん導入されてゆけば、
戦争の仕方そのものが、大きく変わってくる可能性があります。

私は以前、自衛隊でF15戦闘機に乗っていたパイロットと話をしたことがあります。

その方が曰く、

空中旋回でGがきつくて、耐Gスーツを着ても気を失いそうになるし、
体を鍛えていないと、もちろん、このF15には乗れないということでした。

「かかるGは、F1レーサーどころの話じゃないよ」と言っていたのが印象的でした。

ところがどうでしょう、
それが、この「無人機」という「テクノロジー」の発達で
その様相が全く変わる可能性があります。

少なくとも、こうは言えるでしょう。

普段からゲームをやりまくり、それとほぼ同様の感覚・感性で、
実際の軍用戦闘機を、あたかもラジコンのように操作できる。
そんな「ヲタク」気質の人間の方が、
自らの身体を極限まで鍛えた"マッチョ"な戦闘機乗りよりも
重宝される時代は近いのです。

旧日本軍の「ゼロ戦乗り」で、伝説の撃墜王として知られる、
故坂井三郎氏は、日本人のみならず、
実際にドックファイトをしたアメリカ兵からも大変尊敬されていましたが、
新しい時代の「撃墜王」は、体が貧弱なゲーマーであるかもしれません。

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「Race aginst the Machine」などといった書籍が、
日米ともに話題となるように、ともすれば、
機械やロボットに仕事を奪われてしまいかねない、シビアなご時世ですが、
そうであるからこそ、他人とは違う、強い個性が必要な時代になりました。

こんな混沌とした時代に対応して、力強く生き抜いてゆくには、
他人と違う強みをしっかりと創るよりほかありません。
自分を見失わない強さを創ってゆく。

そんな「累積戦略」がありますか?

そして、先程のゲーマーのようなことがありえる時代です。
ついに「引きこもり」のクリエーターが勝利する時代がやってきたのかもしれません。

奥山さんと共に、今回、お話したようなことをじっくり考えてみました。
ぜひ、読者の皆さんともこの問題意識を共有できれば、と思っています。

http://www.realist.jp/cumseq.html

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さて、早速ですが、・ネオコンをはじめとする勢力が狙ってきた米国の世界一極覇権支配は、長くは続かない。・中国が膨張し、アジアの覇権をねらい、世界は多極構造になる。 90年代から上記のように予想し、米国内でも論争してきたのがリアリスト学派です。

リアリスト学派は、国家のパワー(軍事力、政治力、人口規模、経済力等)がもっとも大事な要素と考え、

正義やイデオロギー、理念は関係ない。国際関係はパワーで決まり、パワーを予測し戦略を立てよう

と考える学派で、19世紀の英国の行ったバランス・オブ・パワーを活用した大戦略を信条とします。

ところが「リアリスト」を自認する日本の親米保守派は、
「経済中心主義」で「安保無料(だだ)乗り」をし続けていますが、
実は、彼らは、以下の2点で決定的、かつ、致命的な誤りを犯していたのです。
そして、そうした日本の政策は、冷酷な米国のリアリストから、
単なる「バンドワゴニング」に過ぎない、と足元を見透かされているのです。

その2点とは、

(1)日本はアングロサクソン(米英)についていれば大丈夫。

(2)米国は「民主制度」と「法治」、「人権」を重んずる日本を信頼し、
   一党独裁の共産主義中国を嫌っている。

ということです。

まず、(1)については、
日英同盟時も上手くいった。だから、これからも米国についてゆけば大丈夫!
万事問題ないというものです。

しかし、我が日本が戦後60年間、幸いにして戦争に巻き込まれなかったのは、
ほとんど偶然の産物であったということは、強く認識しておく必要があります。

米国は国益に係わることならば、いとも簡単に「友達」を切り捨て、裏切る国である。
国論が変われば友好国をあっさり切り捨ててきたことは、これまでの歴史の事実が証明しています。

・日中戦争では、蒋介石を応援しつつも、途中から毛沢東支援にまわった。

・ソ連打倒のためには台湾(中華民国)を切り捨て、中華人民共和国と国交を結んだ。

・ベトナム戦争では出口がみえなくなり、結局南ベトナム支援からあっさり撤退した。

・米国が支援していた南ベトナムは崩壊し、大量の難民があふれ出た。

・イラン・イラク戦争の時、イランが戦争に勝って影響力が拡大することを恐れた米国は、
 サダムフセインに(イラク)に軍事的な支援をした。
 しかし、支援した米国は干渉してこないと思ったフセインは、その後クウェートに侵攻し、
 湾岸戦争、イラク侵攻と2度の戦争で米国に打ちのめされ、最後は米軍に捕まり処刑された。

如何でしょうか?

これでもまだあなたは、アメリカはずっと「友達」でいてくれる!

と思えますか?

次に、(2)についてですが、
欧米メディアなどの報道によれば、米国内における中国の工作員の数は激増しています。
更には、人民解放軍には「政治工作条例」なるものまであります。
彼らは世論戦、心理戦、法律戦からなる「三戦」の任務を与えられ、
まさに今、中国は国策として、米国内で「世論戦」を仕掛けている、というのが冷酷な事実です。

正義や真実でなく、ウソでも現実をつくれると考える中国の
カネも人員もかけたまさに「人海戦術」的な、この国家戦略が功を奏し、
すでに米国世論では「尖閣は日本が強奪した島だ」ということに傾き始めている・・・
この危険な状況を皆さんはご存知でしょうか?

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例えば、韓国との従軍慰安婦問題をみるまでもなく、
日本国内で、いわゆる「保守派」といわれる人達が、
どれだけ「真実」を主張しても、
同じ日本人であるはずの国内左翼勢力がこの外患に呼応するという、
典型的なパターンに陥っている事例は、枚挙に暇がありません。

白州次郎は「日本をプリンシプルのない国」と言いました。
しかし、残念ながら、この分析は現在の日本にも今だに当てはまっているのです。

これらの冷酷な事実を踏まえ、
本サイトで皆さんとともに真剣に考えていきたいのは、以下の2点です。

・日本はいかにして「パワー」を獲得すればいいのか?

・どんな国家像を描き、グランド・ストラテジーを立てればよいのか?

この二つの質問を念頭に据えて、米国のリアリスト思考を学び、
日本におけるリアリスト思考を広げ、リアリスト学派をつくっていく。

これが、このサイト、www.realist.jpの目的です。
あなたも是非議論に加わって下さい。



リアリスト思考を最初に日本にもたらした、
シカゴ学派、元フーバー研究所上席研究員、故・片岡鉄哉先生に捧ぐ

日本がこのままの状態でいけば、
少なくとも十年以内に、二流、三流の地位まで確実に堕ちていくことになる。
現在の日本の状況を冷静に見れば、
どう考えてもそういう結論しか出てこないのだ。
しかし、日本はそのまま堕ちっぱなしというわけではない。

何年後になるかわからないが、日本はしぶとく復活するはずである。
国家というのはいつまでも堕ちっぱなしということはなく、
反省して自覚した国民が生まれ、それが国を復興することになるからである。

そのときに、決定的に必要となつてくるのが「理想」である。

地政学の祖であるマッキンダーは、
「人類を導くことができるのは、ただ理想の持つ魅力だけだ」
と言っている。

しかし彼は、同時に現実を冷静に見る目を
忘れてはならないことを鋭く警告している。
それが地理と歴史を冷静に分析した、
地政学という学問が与えてくれる視点なのである。
彼が一九一九年に発表した『デモクラシーの理想と現実』
という本の題名は、このような理想と現実のバランスの大切さを訴えている。

世界はこれから「カオス化」していく。
これはつまり、世界はこれからますます複雑化した
先の見えない場になるということである。

そして日本は、「カオス化」された状況の中で
自立を目指さなければならないし、
むしろ自立せざるを得ない状況に追い込まれることになるかもしれない。
そして、その中で世界に伍していくためには、
日本人は何よりもまず、リアリズムの思考法を身につけなければならない。

日本人は自分で責任を持って戦略を考えるという思考を捨ててしまい、
安易に平和的な解決だけを求めるという体質が染みついてしまった。
たとえば、外交における戦略も「善か悪か」で判断するため、
善を探そうとするあまり、次の一手がどうしても遅くなる。

しかも、日本が「善かれ」と思って世界に主張したことは、
まずもって善として見られていない。
他国はリアリズムの視点で「日本が何を狙っているのか」
と冷酷に見ているのだ。
だからこそ、わが国も外交戦略を「善悪」ではなく、
「強弱」で見るように訓練しなければならない。
「強弱」とは、現在わが国にとって、
この政策は他国と比べて立場を強めてくれるのか
弱めるものかという冷静な判断である。

弱いのであれば、より強い政策を打ち出さなければならないし、
強いものであれば、政策をより国益に近づけなければならない。
こうしたリアリズムの思考を身につけることは、
むしろ「国際的なマナー」なのである。