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地政学を英国で学んだ
しばらくお待ち下さい。
2013年02月27日  「今」こそTPP問題にケリを付けるタイミングだ。

共同管理人の和田です。

前回の「アメ通」では、あえて「TPP賛成」の立場から、
この問題の是非を少し考えてみましたが、
つづきをお送りします。

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TPP反対派の人は、
この問題に対して、性急に動くべきではないとしています。
「きっと交渉に失敗する」という思いがあるのでしょう。

確かに、日本人は交渉下手である、
ということは、残念ながら私も認めざるをえませんが、
評論家が「きっと失敗するから」反対という身もふたもない、
"情緒的な"予測でいいのでしょうか?

その消極論には、交渉が上手くゆかないということに対する
「根拠」が弱いのです。

私は故片岡鉄哉先生(初代「アメ通」主筆)から、
直接伺ったことがあります。

故橋本龍太郎氏が、日米自動車交渉に挑んていた際、
片岡先生は米国側の本心についてのアドバスを求められました。

結果は、交渉後の帰国時の機内で、通産官僚が
シャンパンで祝杯をあげたそうです。

日米自動車摩擦時や、繊維摩擦など、
日本の通産省と政治家は、たとえあのアメリカ相手であれ、
有利に交渉を乗り越えてきたという経験もあるのです。

確かに、これまで、薬害エイズ事件などをはじめ、
世界覇権国:米国にやり込められてきた件が、
あまたあるのは、否定のしようがありません。

 ※ましてや、これが対中国とのFTA交渉などとなったら、
  「毒餃子事件」の際に、謝罪すらなかった
  あの、あたかも"馬賊"かのような中国を相手に、
  いったい誰がまともにやり合えるのか?
  という問題も残ります。

現状において、今の安倍内閣以上に日米交渉を
任せられる政権が他にあるでしょうか?

「待つ」という選択肢なら「いつまで待つか」もポイントになります。

「最低でも県外」と言い放ち、普天間移転問題、
さらに日米関係そのものまでも大きくこじれさせた、
あの首相を、ほんの3年前に生んでしまった・・・、
今の日本はそんな情けない政治状況です。

あのような惨状が、今後、再びおとずれてしまうかもしれないのです。

また、もし、自民党政権下であったとしても、
いわゆる"媚中派"と称される、谷垣氏や河野太郎氏あたりが
自民党内の実権を握っていたとしたら、TPPに反対し、
米国ではなく、チャイナシフトを行なってしまうかもしれません。

また、外国人参政権に賛成の立場、と言われている
石破氏などが総理になっていたとしたら、
米国との交渉もこじらせ、中国寄りの政策を取る可能性も
十分に考えられるわけです。

「アメ通」読者の皆さんの中で、もし「保守派」を自認し、
「日中韓FTA」や「東アジア共同体」には賛同できない、
という立場を取るかたであるならば、日米交渉を有利に展開し得るのは、
この安倍内閣を置いて他にあるまい、という結論にはならないでしょうか?

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「いつやるの、今でしょ」
という話になってしまいましたが、
更に重要なファクターを追加します。

「政治」の身内側だけでなく、相手の政権によって大きく変わります。

米国では、国務長官が、親中派のヒラリー・クリントン氏から
媚中派のケリー氏に変わりました。

ケリー氏は、ベタベタの"パンダハガー"(中国に取り込まれた人)であり、
その発言の中には、同盟国日本は存在せず、
中国と米国のG2で世界を牛耳るという主旨の、
日本にとっては、穏やかならざるものが含まれています。

今後、もし、仮に、オバマ政権内でのケリーの影響力が高まった時に、
オバマ政権の舵取りが大きく変わり、チャイナ・シフトしてしまう・・・
という可能性が大いにあるのです。

更に、民主党政権に近いと言われている、
あの"ソフト・パワー"の権化:ジョセフ・ナイ氏にいたっては、
米中の経済関係を拡大しつつ、同時に、中国を封じ込めることが出来る、
とお考えのようで、なんと驚くことに、
中国もTPP参加させるべきだ、といったことまで主張しています。

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ですが、私は、日本が外交政策上、最重要課題は常に、
「米中の接近を阻止すること」である、と考えています。

"ゆとり教育"が隅々まで浸透してしまった現在、
タフネゴシエイターの政治家が、果たして、
あと何年後に出てくるのでしょうか・・・。
その前、もし米中の経済協力体制が構築されてしまえば、
日本はもはや為すすべなく、3流国化に一直線です。

私は、「TPP問題」に関する書籍を数冊読んだレベルですが、
TPP参加反対派の人達の意見が、
「戦略の階層」的視点で分析してみると、
経済圏や、軍事同盟といった「戦略的」観点が、
すっぽりと抜け落ちているように思えて仕方がなかったので、
かなり長めにお話してみました。

あくまでも、私が読んだ限りにおいてはですが、
TPP参加賛成派の人の意見ほうが、
その発想に「戦略の階層」が見えるため、論理的である。
同様に、TTP参加反対派の人達の意見の中にも、
この「戦略の階層」を踏まえた議論が出来る人が登場すれば、
より有益な国民的議論が盛り上がるのではないでしょうか?

リアリストであろうと考えるなら、「戦略の階層」で
同盟国を決定することは必須事項です。

あくまで「戦略の階層」という概念を当てはめて考えたときに、
統一感があるかどうかで判断したので、その点についてはご了承下さい。

「アメ通」は、読者の皆さんと共に、
日本が今後取るべき「戦略」についてリアリストとして考える、
という主旨のメルマガなので、

『国家の方針においてすべてこの「戦略の階層」を意識、
無意識に持つかどうかが重要なのである』という立場だからです。

(共同管理人 和田)

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戦略を語れない人生は奴隷だ

技術を制するのは高度な技術ではない。より上流階層からルール決めには対抗できない。
今こそ日本人は「戦略の階層」を学び、その全体像を理解しなければならない。

詳しくはこちらをどうぞ


このサイトはリアリズムについて学ぶ人を増やすためのサイトです。

さて、早速ですが、・ネオコンをはじめとする勢力が狙ってきた米国の世界一極覇権支配は、長くは続かない。・中国が膨張し、アジアの覇権をねらい、世界は多極構造になる。 90年代から上記のように予想し、米国内でも論争してきたのがリアリスト学派です。

リアリスト学派は、国家のパワー(軍事力、政治力、人口規模、経済力等)がもっとも大事な要素と考え、

正義やイデオロギー、理念は関係ない。国際関係はパワーで決まり、パワーを予測し戦略を立てよう

と考える学派で、19世紀の英国の行ったバランス・オブ・パワーを活用した大戦略を信条とします。

ところが「リアリスト」を自認する日本の親米保守派は、
「経済中心主義」で「安保無料(だだ)乗り」をし続けていますが、
実は、彼らは、以下の2点で決定的、かつ、致命的な誤りを犯していたのです。
そして、そうした日本の政策は、冷酷な米国のリアリストから、
単なる「バンドワゴニング」に過ぎない、と足元を見透かされているのです。

その2点とは、

(1)日本はアングロサクソン(米英)についていれば大丈夫。

(2)米国は「民主制度」と「法治」、「人権」を重んずる日本を信頼し、
   一党独裁の共産主義中国を嫌っている。

ということです。

まず、(1)については、
日英同盟時も上手くいった。だから、これからも米国についてゆけば大丈夫!
万事問題ないというものです。

しかし、我が日本が戦後60年間、幸いにして戦争に巻き込まれなかったのは、
ほとんど偶然の産物であったということは、強く認識しておく必要があります。

米国は国益に係わることならば、いとも簡単に「友達」を切り捨て、裏切る国である。
国論が変われば友好国をあっさり切り捨ててきたことは、これまでの歴史の事実が証明しています。

・日中戦争では、蒋介石を応援しつつも、途中から毛沢東支援にまわった。

・ソ連打倒のためには台湾(中華民国)を切り捨て、中華人民共和国と国交を結んだ。

・ベトナム戦争では出口がみえなくなり、結局南ベトナム支援からあっさり撤退した。

・米国が支援していた南ベトナムは崩壊し、大量の難民があふれ出た。

・イラン・イラク戦争の時、イランが戦争に勝って影響力が拡大することを恐れた米国は、
 サダムフセインに(イラク)に軍事的な支援をした。
 しかし、支援した米国は干渉してこないと思ったフセインは、その後クウェートに侵攻し、
 湾岸戦争、イラク侵攻と2度の戦争で米国に打ちのめされ、最後は米軍に捕まり処刑された。

如何でしょうか?

これでもまだあなたは、アメリカはずっと「友達」でいてくれる!

と思えますか?

次に、(2)についてですが、
欧米メディアなどの報道によれば、米国内における中国の工作員の数は激増しています。
更には、人民解放軍には「政治工作条例」なるものまであります。
彼らは世論戦、心理戦、法律戦からなる「三戦」の任務を与えられ、
まさに今、中国は国策として、米国内で「世論戦」を仕掛けている、というのが冷酷な事実です。

正義や真実でなく、ウソでも現実をつくれると考える中国の
カネも人員もかけたまさに「人海戦術」的な、この国家戦略が功を奏し、
すでに米国世論では「尖閣は日本が強奪した島だ」ということに傾き始めている・・・
この危険な状況を皆さんはご存知でしょうか?

-*- -*-

例えば、韓国との従軍慰安婦問題をみるまでもなく、
日本国内で、いわゆる「保守派」といわれる人達が、
どれだけ「真実」を主張しても、
同じ日本人であるはずの国内左翼勢力がこの外患に呼応するという、
典型的なパターンに陥っている事例は、枚挙に暇がありません。

白州次郎は「日本をプリンシプルのない国」と言いました。
しかし、残念ながら、この分析は現在の日本にも今だに当てはまっているのです。

これらの冷酷な事実を踏まえ、
本サイトで皆さんとともに真剣に考えていきたいのは、以下の2点です。

・日本はいかにして「パワー」を獲得すればいいのか?

・どんな国家像を描き、グランド・ストラテジーを立てればよいのか?

この二つの質問を念頭に据えて、米国のリアリスト思考を学び、
日本におけるリアリスト思考を広げ、リアリスト学派をつくっていく。

これが、このサイト、www.realist.jpの目的です。
あなたも是非議論に加わって下さい。



リアリスト思考を最初に日本にもたらした、
シカゴ学派、元フーバー研究所上席研究員、故・片岡鉄哉先生に捧ぐ

日本がこのままの状態でいけば、
少なくとも十年以内に、二流、三流の地位まで確実に堕ちていくことになる。
現在の日本の状況を冷静に見れば、
どう考えてもそういう結論しか出てこないのだ。
しかし、日本はそのまま堕ちっぱなしというわけではない。

何年後になるかわからないが、日本はしぶとく復活するはずである。
国家というのはいつまでも堕ちっぱなしということはなく、
反省して自覚した国民が生まれ、それが国を復興することになるからである。

そのときに、決定的に必要となつてくるのが「理想」である。

地政学の祖であるマッキンダーは、
「人類を導くことができるのは、ただ理想の持つ魅力だけだ」
と言っている。

しかし彼は、同時に現実を冷静に見る目を
忘れてはならないことを鋭く警告している。
それが地理と歴史を冷静に分析した、
地政学という学問が与えてくれる視点なのである。
彼が一九一九年に発表した『デモクラシーの理想と現実』
という本の題名は、このような理想と現実のバランスの大切さを訴えている。

世界はこれから「カオス化」していく。
これはつまり、世界はこれからますます複雑化した
先の見えない場になるということである。

そして日本は、「カオス化」された状況の中で
自立を目指さなければならないし、
むしろ自立せざるを得ない状況に追い込まれることになるかもしれない。
そして、その中で世界に伍していくためには、
日本人は何よりもまず、リアリズムの思考法を身につけなければならない。

日本人は自分で責任を持って戦略を考えるという思考を捨ててしまい、
安易に平和的な解決だけを求めるという体質が染みついてしまった。
たとえば、外交における戦略も「善か悪か」で判断するため、
善を探そうとするあまり、次の一手がどうしても遅くなる。

しかも、日本が「善かれ」と思って世界に主張したことは、
まずもって善として見られていない。
他国はリアリズムの視点で「日本が何を狙っているのか」
と冷酷に見ているのだ。
だからこそ、わが国も外交戦略を「善悪」ではなく、
「強弱」で見るように訓練しなければならない。
「強弱」とは、現在わが国にとって、
この政策は他国と比べて立場を強めてくれるのか
弱めるものかという冷静な判断である。

弱いのであれば、より強い政策を打ち出さなければならないし、
強いものであれば、政策をより国益に近づけなければならない。
こうしたリアリズムの思考を身につけることは、
むしろ「国際的なマナー」なのである。