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地政学を英国で学んだ
しばらくお待ち下さい。
2013年03月12日 あなた自身の、等身大の「大戦略」の作り方

共同管理人の和田です。

奥山さんはじめ、「アメ通」スタッフは、
通常は、国家レベルで考えるような「大戦略」を
私たちひとりひとり、個人のレベルで、
身近に使いこなせるまで落とし込みたい。

そのような気持ちで、この「アメ通」を発信しています。

初代主筆・片岡鉄哉教授が、
国際情勢や国際政治の出来事に対して、
日本の「戦略」をどう考えるか、「リアリスト」の立場から、
ヒントを投げかけるものが、当初の「アメリカ通信」のコンセプトでした。

その後、片岡先生が逝去され、奥山さんにバトンタッチして以来、
30~40代の読者の方も多くなってきました。そんな中で、

「そもそも戦略ってわからないんですが?」
「戦略的思考って実際どんなものですか?」

というニュアンスの質問やご意見を頂くことも増えてきました。

そこで、最近の本メルマガでは

『「戦略」を日本人に理解してもらう』
『「戦略」を自分に置き換え、個人レベルで実感し、「戦略思考」を役立ててもらう』

という視点から、読者の皆さんにとって、
何らかのヒントやキッカケとなる情報を発信できるよう心がけています。

「仕事」や「生き方」についてのたたき台的ヒントも提示できれば・・・
と、密かにそんな壮大な計画を思い描いてみたりもするのですが(笑)、
最近、この「アメ通」にて「経済」の話題を多く取り上げているのは、
私たちなりの、そんな「大戦略」に基づいたものでもあります。

「大戦略を個人に応用する」と言っても、
個人の人生の土台をつくる上で、やはり、大きな役割を果たすのは「経済」である。

このことに異論のある方は少ないのではないでしょうか?

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▼株式市場の役割

そういうわけで、今回も「経済」のお話をしてみたいと思います。

今回のテーマは株式市場についてなのですが、
ご興味のない方は飛ばして下さって結構です。


さて、株式市場が3月7日12,000円を回復しました。

アベノミクスの量的緩和の口先介入で円は下がりました。
円安なので小麦やガソリンなどの輸入品の物価は上がります。
そして、私たちの所得はどうなるかというと、
世界的にみれば、日本人の所得水準はまだまだ高いですから、
そう簡単に上がるとは考えられません。

自民党が経団連に給料を上げるように要請した、という報道がありました。

私はあえて言いたいのですが、
その要請は余計なことなのではないでしょうか?

国家に対して「給料を上げてくれ!」というのは、
「自由を価値・第一」と考える
我々チーム「アメ通」としては口に出せません(苦)。

何と言っても、私達の学問上の師:故片岡鉄哉先生が、
自由主義の牙城シカゴ大出身でシカゴ学派ですから。

在るべき姿としては、
個人が自分の所得を上げていくしかありません。
私たちひとりひとりが、自らやるべきことです。

そして、私たちでは出来ないことを、
「政治家」に託して実行してもらう。
そのために、政治家を選ぶのです。
選挙の意味、投票行動の意味とはそういうことです。

では、その政治家に、「何」をやってもらうのか?
「安全保障」や「外交」や「エネルギー問題」です。

その以外の分野・領域のことについては、
私たちは自由国家・日本の国民ですから、
自分の生活や夢については、「セルフヘルプ」で望むまでです。
共産主義・社会主義者じゃありませんから、
基本的に国に頼ることではないのです。

※「国民の生活が~」というスローガンを第一に掲げていた政党もありましたが、
  そのことを言い出すとキリがないので、今回は置いておきます。(笑)

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そこで、唐突ですが、株です。

「株を買え」

博打をすすめるの?
これが、個人の戦略か?

と突っ込まれるかもしれませんが、
少額でいいので「戦略的に」株式投資をやってみてはどうかな?
と提案してみたいと思います。

なぜなら、金持ちがより金持ちになっていくような情勢で、
若者や庶民がそのような潮流に少しでも追随していけるとすれば、
それは、株式投資ではないのかな?と思うからです。

銘柄、タイミングは百人百色でいいのですが、
「自ら思考する」という副次的な効果もあります。

自らの人生に責任を持つには
戦略の一つとして資産の拡大は重要です。

実際のところ、株は数万円あったら買えます。
休日にスロットやパチンコで使うくらいの金額です。

▼自由主義国家とは株式市場のある国家だ。

メリットは?といえば、株を買えば、経済がなんとなく実感できます。

身銭を切って投資するわけですから、
政府の政策一つで、自分の財産の増減が実感でき、
センシティブになる分、自動的に経済を学習することができるます。
もし興味があるならば、給与所得があるうちから練習しておくべきです。

引退後のあなたの人生を20年と想定するか、30年とするか?
さらに医学が進歩して40年になるか?

これまで「アメ通」を読んでいるような読者の皆さんならば、
とうにお気づきだろうと思いますが、
私たちは65歳で引退して、90歳までは生きるというのに、
もはや、国庫に十分な年金が残っていないことは明らかです。

それどころか、私たちは、医療技術の発達により、
100歳まで生きることができる可能性さえ、非常に高いのです。

自分の財産を自分で運用することも必要だ、と考えると
今のうちから、退職金がでる前に、たとえ少額からであっても、
予行演習をしておくべきではないでしょうか?

ここで、日本人と米国人は金融資産に占める割合を見てみます。

(日銀の家計の資産構成より)

現金預金   日本 55.6% 米国 14.3%
株式     日本 5.8%  米国 32.9%
債券     日本 2.2%  米国 8.7%
投資信託   日本 3.8%  米国 12.8%
保険年金準備金 日本 28.2%  米国 28.5%

いかがでしょうか?

これはよく引き合いにだされる比較ですが、
アメリカ人は個人資産に占める株式の割合が高いし、
債券、投信も含めると、家計の54%を自分で考え、
リスクをとっているのです。

このことが意味するのは、
経済が今以上に発展すると考えていること。
自分の考えで投資対象を探していること。
私有財産の増大こそ重要である。

と一般的なアメリカ人が思っているということの現れでしょう。

日本の株式、債券、投信の合計は、11.8%です。
日本人はあまり自国の経済を信じていないのかも知れませんね。

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米国人は、確定申告も自分でやるので政治に対する思いが強いのです。
「タックスペイヤー」という言葉には、「支払い」の意味が含まれます。
「支払い」なので、当然、その「代価」を求めることができるのです。

日本は「納税」という「納める」ということばに置き換えられ、
"お上を信頼している"感、そういう空気が意図的に醸成されています。

源泉徴収された上に、ほとんどの人は年末調整で済ませます。
これほど、「お上」に対して文句を言わない国民はありません。

原発問題や、オスプレイ配備問題以上に
国民全員に大きな影響のある「税」に無関心なのです。
そして、日本人の無関心は、政府や官僚によってつくられています。

私たちひとりひとりが、自らの問題として、
政府、政治に対する意思表明をする必要があるのではないでしょうか?

例えば、株式投資を行えば、否が応でも、
政府のやっていることに対して、注意深くならざるをえません。
国民は、もっと政治家や官僚を監視すべきです。


▼税収への最大貢献要素は株価上昇

もちろん、「株は嫌いなんだよ」という人もいると思います。
やっぱり「株式市場とは無関係でいたい」という人もいると思います。
しかし、実は株式市場は全国民生活に大いに関係します。

どういうことかと言うと、
年金や保険の運用先として株式市場が使われているからです。

何より、まったく無視できないのは、
国庫に入ってくる税収が大きいからです。
財源確保、国の収入が最大に上がる貢献要素は、
ぶっちぎりで株価上昇です。

日本ではこの議論はほとんどされてないのですが、
日本も米国も税収が大きく上がる時は、必ず株価が上昇している時です。

失業者対策や公共事業のバラマキなどではでなく、
国の財政を収入面から改善するためには、
「株価上昇させられるか」どうかは、重要なポイントです。

国の財源ですから、教育や医療、防衛まで
すべてに貢献するのが株式市場とも言えます。

実際、米国は大赤字財政をチャラにしたことがあります。
クリントン政権時代です。株価が3倍になったからです。
あれだけのスキャンダルでも、退陣もせず、
任期を全うできたのは、株価が上がっていたからです。

日本の最大の税収はバブル時でしたが、残念ながら赤字のままでした。

それはなぜなのか?

税収増加に喜んで、政治家と官僚が
更に予算を組んでバラマキまくったからです。

我々がエリートだと思う最高学歴の官僚も、選んだ政治家も
「入るを量って出ずるを制す」が全くできない人たちでした。

やはり、この点から考えても厳しい国民からの監視が必要なのです。

国家財政を見る場合は、極端にいうと、

株価を上げられるか?
歳出を絞れるか?

この両方の監視がもっとも大きなポイントになります。

私は、「株式市場を育てる」ということは、
国にとっても重要な事項であることはもちろん、
「自由主義国」たる日本で生活する、私たち一人一人にとっても同様である
と考えます。

個人の「戦略の階層」に株式投資を組み込むことをオススメします。

→ → → http://www.realist.jp/strata.html

( 共同管理人 和田 )

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このサイトはリアリズムについて学ぶ人を増やすためのサイトです。

さて、早速ですが、・ネオコンをはじめとする勢力が狙ってきた米国の世界一極覇権支配は、長くは続かない。・中国が膨張し、アジアの覇権をねらい、世界は多極構造になる。 90年代から上記のように予想し、米国内でも論争してきたのがリアリスト学派です。

リアリスト学派は、国家のパワー(軍事力、政治力、人口規模、経済力等)がもっとも大事な要素と考え、

正義やイデオロギー、理念は関係ない。国際関係はパワーで決まり、パワーを予測し戦略を立てよう

と考える学派で、19世紀の英国の行ったバランス・オブ・パワーを活用した大戦略を信条とします。

ところが「リアリスト」を自認する日本の親米保守派は、
「経済中心主義」で「安保無料(だだ)乗り」をし続けていますが、
実は、彼らは、以下の2点で決定的、かつ、致命的な誤りを犯していたのです。
そして、そうした日本の政策は、冷酷な米国のリアリストから、
単なる「バンドワゴニング」に過ぎない、と足元を見透かされているのです。

その2点とは、

(1)日本はアングロサクソン(米英)についていれば大丈夫。

(2)米国は「民主制度」と「法治」、「人権」を重んずる日本を信頼し、
   一党独裁の共産主義中国を嫌っている。

ということです。

まず、(1)については、
日英同盟時も上手くいった。だから、これからも米国についてゆけば大丈夫!
万事問題ないというものです。

しかし、我が日本が戦後60年間、幸いにして戦争に巻き込まれなかったのは、
ほとんど偶然の産物であったということは、強く認識しておく必要があります。

米国は国益に係わることならば、いとも簡単に「友達」を切り捨て、裏切る国である。
国論が変われば友好国をあっさり切り捨ててきたことは、これまでの歴史の事実が証明しています。

・日中戦争では、蒋介石を応援しつつも、途中から毛沢東支援にまわった。

・ソ連打倒のためには台湾(中華民国)を切り捨て、中華人民共和国と国交を結んだ。

・ベトナム戦争では出口がみえなくなり、結局南ベトナム支援からあっさり撤退した。

・米国が支援していた南ベトナムは崩壊し、大量の難民があふれ出た。

・イラン・イラク戦争の時、イランが戦争に勝って影響力が拡大することを恐れた米国は、
 サダムフセインに(イラク)に軍事的な支援をした。
 しかし、支援した米国は干渉してこないと思ったフセインは、その後クウェートに侵攻し、
 湾岸戦争、イラク侵攻と2度の戦争で米国に打ちのめされ、最後は米軍に捕まり処刑された。

如何でしょうか?

これでもまだあなたは、アメリカはずっと「友達」でいてくれる!

と思えますか?

次に、(2)についてですが、
欧米メディアなどの報道によれば、米国内における中国の工作員の数は激増しています。
更には、人民解放軍には「政治工作条例」なるものまであります。
彼らは世論戦、心理戦、法律戦からなる「三戦」の任務を与えられ、
まさに今、中国は国策として、米国内で「世論戦」を仕掛けている、というのが冷酷な事実です。

正義や真実でなく、ウソでも現実をつくれると考える中国の
カネも人員もかけたまさに「人海戦術」的な、この国家戦略が功を奏し、
すでに米国世論では「尖閣は日本が強奪した島だ」ということに傾き始めている・・・
この危険な状況を皆さんはご存知でしょうか?

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例えば、韓国との従軍慰安婦問題をみるまでもなく、
日本国内で、いわゆる「保守派」といわれる人達が、
どれだけ「真実」を主張しても、
同じ日本人であるはずの国内左翼勢力がこの外患に呼応するという、
典型的なパターンに陥っている事例は、枚挙に暇がありません。

白州次郎は「日本をプリンシプルのない国」と言いました。
しかし、残念ながら、この分析は現在の日本にも今だに当てはまっているのです。

これらの冷酷な事実を踏まえ、
本サイトで皆さんとともに真剣に考えていきたいのは、以下の2点です。

・日本はいかにして「パワー」を獲得すればいいのか?

・どんな国家像を描き、グランド・ストラテジーを立てればよいのか?

この二つの質問を念頭に据えて、米国のリアリスト思考を学び、
日本におけるリアリスト思考を広げ、リアリスト学派をつくっていく。

これが、このサイト、www.realist.jpの目的です。
あなたも是非議論に加わって下さい。



リアリスト思考を最初に日本にもたらした、
シカゴ学派、元フーバー研究所上席研究員、故・片岡鉄哉先生に捧ぐ

日本がこのままの状態でいけば、
少なくとも十年以内に、二流、三流の地位まで確実に堕ちていくことになる。
現在の日本の状況を冷静に見れば、
どう考えてもそういう結論しか出てこないのだ。
しかし、日本はそのまま堕ちっぱなしというわけではない。

何年後になるかわからないが、日本はしぶとく復活するはずである。
国家というのはいつまでも堕ちっぱなしということはなく、
反省して自覚した国民が生まれ、それが国を復興することになるからである。

そのときに、決定的に必要となつてくるのが「理想」である。

地政学の祖であるマッキンダーは、
「人類を導くことができるのは、ただ理想の持つ魅力だけだ」
と言っている。

しかし彼は、同時に現実を冷静に見る目を
忘れてはならないことを鋭く警告している。
それが地理と歴史を冷静に分析した、
地政学という学問が与えてくれる視点なのである。
彼が一九一九年に発表した『デモクラシーの理想と現実』
という本の題名は、このような理想と現実のバランスの大切さを訴えている。

世界はこれから「カオス化」していく。
これはつまり、世界はこれからますます複雑化した
先の見えない場になるということである。

そして日本は、「カオス化」された状況の中で
自立を目指さなければならないし、
むしろ自立せざるを得ない状況に追い込まれることになるかもしれない。
そして、その中で世界に伍していくためには、
日本人は何よりもまず、リアリズムの思考法を身につけなければならない。

日本人は自分で責任を持って戦略を考えるという思考を捨ててしまい、
安易に平和的な解決だけを求めるという体質が染みついてしまった。
たとえば、外交における戦略も「善か悪か」で判断するため、
善を探そうとするあまり、次の一手がどうしても遅くなる。

しかも、日本が「善かれ」と思って世界に主張したことは、
まずもって善として見られていない。
他国はリアリズムの視点で「日本が何を狙っているのか」
と冷酷に見ているのだ。
だからこそ、わが国も外交戦略を「善悪」ではなく、
「強弱」で見るように訓練しなければならない。
「強弱」とは、現在わが国にとって、
この政策は他国と比べて立場を強めてくれるのか
弱めるものかという冷静な判断である。

弱いのであれば、より強い政策を打ち出さなければならないし、
強いものであれば、政策をより国益に近づけなければならない。
こうしたリアリズムの思考を身につけることは、
むしろ「国際的なマナー」なのである。