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地政学を英国で学んだ
しばらくお待ち下さい。
2013年03月27日 「欲」がなければ戦略もたてられない

管理人の和田です。

渡部昇一氏がホストを務める「新世紀歓談」という対談番組が
テレビ東京で5年間ほど放送していました。

保守であった社長が東日本ハウスが5年も番組支援してきましたが、
番組プロデューサーは、自虐史観でもあったようです。
谷沢永一氏の出演回などは、収録一本分、
番組まるまる事前カットして未放送となってました。
木曜が収録日での日曜放送だったのが、
問題発言の削除編集が間に合わないので、
さらに事前の火曜に収録日を変更したくらいでした。
言論番組で、言論が規制され、言論の自由はありませんでした。

もともと番組冒頭では、
「この番組は現代の諸問題を国益をもとに考えて・・・・」
と、渡部氏が番組趣旨を説明しておりました。
それが番組開始後、数ヶ月後から「国益」という言葉が消えていました。
渡部氏によると局側から「国益」がNGワード指定になっていたようです。
視聴者からのクレームにも弱く面白い番組をつくる気概はありませんでした。

日本の政治社会問題を語る言論番組であるのに「国の利益」について
語るという命題を許されなくなっていたのです。
それでも他の言論番組よりははるかに歴史に忠実で知的で、
国際感覚にあふれる論理的な会話にあふれていましたが、
知りたいことが十分に知らされないという、
規制されている部分が非常に惜しく思っていました。


アメ通初代主筆片岡鉄哉先生は、日本に欠けているものについて
こう語っていました。

「和田君ね、人間は気概がなきゃだめだよ。
アメリカ人は気概がある。自由を選ぶからね。
だから社会が躍動感がある。
際限のない欲を追求することもできるし、
落ちぶれる可能性も、落ちぶれる自由もある。
日本人ってのはいつのまにか、気概を忘れ、
自由を捨てているようになっちゃったね。
怖がって勝負しないんだよ。」


片岡先生は、戦後日本の問題の根本は平和憲法にあったと
常々主張していました。
その憲法誕生の秘密にせまったのが片岡先生の大著、
「さらば吉田茂(改題;日本永久占領)」でした。
この原題は、「A Price of Constitution」であり、
「ある憲法(国体)の代償」という意味です。
日本は本当に高い代償を払っていたのです。


この代償はさまざまなモノがありましたが、
近年一番日本人が失ってまずかったものは、
「気概」や「欲」ではないでしょうか?

「日本は国益を追求して侵略戦争をしたから」
というプロパガンダを仕掛けられ、国内の左翼も便乗し、
その「利益追求の否定」や「欲の否定」が日本全体に残っているのです。
礼節の国であるから、余計なでしゃばったことはしないのが
日本の良さではありますが、「良心」という名のもとに
軋轢を避け、批判を恐れる小心者国家になってしまいました。

国際社会では意思表明しないことからどんどん差し込まれ、
ありもしない歴史を押し付けられてきています。
「南京大虐殺」しかり、「従軍慰安婦」しかり、未来の子孫へ
つけを先延ばししてきたのです。

どこの国も国益を追求し、企業も個人も利益を追求して
ぶつかり合っての競争社会があるのです。
その根本である「欲」をなくしていることに、
活気のない低迷日本があるように思えます。

テレビ番組でも「国益」を追求する話ができない。
「日本だけが利益を追求してはいけない」調の討論など
見飽きました。

「欲」なくしては、戦略の構築ができません。
自己啓発や自分探し、自分らしさが流行っていますが、
そもそも「気概」や「欲」抜きにそんなもの成り立たないでしょう。
国家戦略も同様です。

「遠慮気味の気概」や「自己規制した欲」では、
もったいなどころか戦略はたてられません。
現実に即した戦術レベルの話なら可能かもしれませんが、
たいした成功ができなくなってしまいます。

戦略はそもそも論です。
素になってどうありたいかを考えて組み立てるものです。
「戦略は未来(ウソ)」「戦術は現実」です。
戦略はまだ実現していない「怒涛の欲」の部分を否定すると作れないのです。
本物の「欲」を否定すると当然「気概」は湧いて出ません。

「欲」が弱いと「尖閣が欲しい」だの、「竹島が欲しい」という
強欲国家の方針が予測できません。
「欲」と「ウソ」で負けると戦略上必敗となります。
隣国の強欲さ具合を浅く見積もってきました。
人の「欲」が計算できないと戦略がたてられないのです。
国家や個人みずからの縮小傾向を精算する上でも、
「戦略」についての正しい思考をつくるのは、
「欲」という単純な人間の本能を否定しないことを強調したいものです。

(共同管理人 和田)

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さて、早速ですが、・ネオコンをはじめとする勢力が狙ってきた米国の世界一極覇権支配は、長くは続かない。・中国が膨張し、アジアの覇権をねらい、世界は多極構造になる。 90年代から上記のように予想し、米国内でも論争してきたのがリアリスト学派です。

リアリスト学派は、国家のパワー(軍事力、政治力、人口規模、経済力等)がもっとも大事な要素と考え、

正義やイデオロギー、理念は関係ない。国際関係はパワーで決まり、パワーを予測し戦略を立てよう

と考える学派で、19世紀の英国の行ったバランス・オブ・パワーを活用した大戦略を信条とします。

ところが「リアリスト」を自認する日本の親米保守派は、
「経済中心主義」で「安保無料(だだ)乗り」をし続けていますが、
実は、彼らは、以下の2点で決定的、かつ、致命的な誤りを犯していたのです。
そして、そうした日本の政策は、冷酷な米国のリアリストから、
単なる「バンドワゴニング」に過ぎない、と足元を見透かされているのです。

その2点とは、

(1)日本はアングロサクソン(米英)についていれば大丈夫。

(2)米国は「民主制度」と「法治」、「人権」を重んずる日本を信頼し、
   一党独裁の共産主義中国を嫌っている。

ということです。

まず、(1)については、
日英同盟時も上手くいった。だから、これからも米国についてゆけば大丈夫!
万事問題ないというものです。

しかし、我が日本が戦後60年間、幸いにして戦争に巻き込まれなかったのは、
ほとんど偶然の産物であったということは、強く認識しておく必要があります。

米国は国益に係わることならば、いとも簡単に「友達」を切り捨て、裏切る国である。
国論が変われば友好国をあっさり切り捨ててきたことは、これまでの歴史の事実が証明しています。

・日中戦争では、蒋介石を応援しつつも、途中から毛沢東支援にまわった。

・ソ連打倒のためには台湾(中華民国)を切り捨て、中華人民共和国と国交を結んだ。

・ベトナム戦争では出口がみえなくなり、結局南ベトナム支援からあっさり撤退した。

・米国が支援していた南ベトナムは崩壊し、大量の難民があふれ出た。

・イラン・イラク戦争の時、イランが戦争に勝って影響力が拡大することを恐れた米国は、
 サダムフセインに(イラク)に軍事的な支援をした。
 しかし、支援した米国は干渉してこないと思ったフセインは、その後クウェートに侵攻し、
 湾岸戦争、イラク侵攻と2度の戦争で米国に打ちのめされ、最後は米軍に捕まり処刑された。

如何でしょうか?

これでもまだあなたは、アメリカはずっと「友達」でいてくれる!

と思えますか?

次に、(2)についてですが、
欧米メディアなどの報道によれば、米国内における中国の工作員の数は激増しています。
更には、人民解放軍には「政治工作条例」なるものまであります。
彼らは世論戦、心理戦、法律戦からなる「三戦」の任務を与えられ、
まさに今、中国は国策として、米国内で「世論戦」を仕掛けている、というのが冷酷な事実です。

正義や真実でなく、ウソでも現実をつくれると考える中国の
カネも人員もかけたまさに「人海戦術」的な、この国家戦略が功を奏し、
すでに米国世論では「尖閣は日本が強奪した島だ」ということに傾き始めている・・・
この危険な状況を皆さんはご存知でしょうか?

-*- -*-

例えば、韓国との従軍慰安婦問題をみるまでもなく、
日本国内で、いわゆる「保守派」といわれる人達が、
どれだけ「真実」を主張しても、
同じ日本人であるはずの国内左翼勢力がこの外患に呼応するという、
典型的なパターンに陥っている事例は、枚挙に暇がありません。

白州次郎は「日本をプリンシプルのない国」と言いました。
しかし、残念ながら、この分析は現在の日本にも今だに当てはまっているのです。

これらの冷酷な事実を踏まえ、
本サイトで皆さんとともに真剣に考えていきたいのは、以下の2点です。

・日本はいかにして「パワー」を獲得すればいいのか?

・どんな国家像を描き、グランド・ストラテジーを立てればよいのか?

この二つの質問を念頭に据えて、米国のリアリスト思考を学び、
日本におけるリアリスト思考を広げ、リアリスト学派をつくっていく。

これが、このサイト、www.realist.jpの目的です。
あなたも是非議論に加わって下さい。



リアリスト思考を最初に日本にもたらした、
シカゴ学派、元フーバー研究所上席研究員、故・片岡鉄哉先生に捧ぐ

日本がこのままの状態でいけば、
少なくとも十年以内に、二流、三流の地位まで確実に堕ちていくことになる。
現在の日本の状況を冷静に見れば、
どう考えてもそういう結論しか出てこないのだ。
しかし、日本はそのまま堕ちっぱなしというわけではない。

何年後になるかわからないが、日本はしぶとく復活するはずである。
国家というのはいつまでも堕ちっぱなしということはなく、
反省して自覚した国民が生まれ、それが国を復興することになるからである。

そのときに、決定的に必要となつてくるのが「理想」である。

地政学の祖であるマッキンダーは、
「人類を導くことができるのは、ただ理想の持つ魅力だけだ」
と言っている。

しかし彼は、同時に現実を冷静に見る目を
忘れてはならないことを鋭く警告している。
それが地理と歴史を冷静に分析した、
地政学という学問が与えてくれる視点なのである。
彼が一九一九年に発表した『デモクラシーの理想と現実』
という本の題名は、このような理想と現実のバランスの大切さを訴えている。

世界はこれから「カオス化」していく。
これはつまり、世界はこれからますます複雑化した
先の見えない場になるということである。

そして日本は、「カオス化」された状況の中で
自立を目指さなければならないし、
むしろ自立せざるを得ない状況に追い込まれることになるかもしれない。
そして、その中で世界に伍していくためには、
日本人は何よりもまず、リアリズムの思考法を身につけなければならない。

日本人は自分で責任を持って戦略を考えるという思考を捨ててしまい、
安易に平和的な解決だけを求めるという体質が染みついてしまった。
たとえば、外交における戦略も「善か悪か」で判断するため、
善を探そうとするあまり、次の一手がどうしても遅くなる。

しかも、日本が「善かれ」と思って世界に主張したことは、
まずもって善として見られていない。
他国はリアリズムの視点で「日本が何を狙っているのか」
と冷酷に見ているのだ。
だからこそ、わが国も外交戦略を「善悪」ではなく、
「強弱」で見るように訓練しなければならない。
「強弱」とは、現在わが国にとって、
この政策は他国と比べて立場を強めてくれるのか
弱めるものかという冷静な判断である。

弱いのであれば、より強い政策を打ち出さなければならないし、
強いものであれば、政策をより国益に近づけなければならない。
こうしたリアリズムの思考を身につけることは、
むしろ「国際的なマナー」なのである。