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地政学を英国で学んだ
しばらくお待ち下さい。
2013年04月04日 日本は世界の多極化に耐え得るか

※『月刊日本』(3月号)インタビューより

■日本は世界の多極化に耐え得るか■

▼日本でも新たに第二次安倍内閣が発足した。
安倍総理はオーストラリア、ハワイ、インド、日本を結ぶ
「安全保障のダイヤモンド」という構想を打ち出している。

奥山

安倍政権は中国に対抗するためにこの戦略を掲げたとする主張も多いが、
私にはアメリカの関心を引くために打ち出したもののように見える。
それだけアメリカから見捨てられるのではないか
という強い危機感を持っているということだろう。

内容としては、麻生政権の時に掲げられた
「自由と繁栄の弧」の海洋版といったところで、とくに真新しいものではない。

また、このダイヤモンド構想は中国を挑発することになり、
日中戦争を引き起こしかねないといった議論もあるが、私はむしろ、
国際秩序の混乱が戦争を引き起こすのではなく、
国内秩序の崩壊が戦争を招くのだと考えている。

これについては、古代ギリシャの「メロス島の対話」の故事が参考になる。
これは冷戦時にリアリストたちが好んで取り上げたエピソードだ。

当時、アテネとスパルタの間で争いが起こった際、メロス島は中立の立場をとった。
そこで、アテネはメロス島に圧力をかけて服従を迫ったが、彼らはそれを拒否した。

この交渉の席において、

「強者と弱者の間では、強きがいかに大をなし得、
      弱きがいかに小なる譲歩をもって脱し得るか」

という有名なフレーズが生まれた。
これは国際社会で展開される権力政治のエッセンスだとして、
研究者たちの共通理解となっている。

その後、メロス島はアテネが仕掛けた「メロス包囲戦」に敗れるのだが、
リアリストたちはここから、国際システムの乱れが戦争の原因になる
という結論を導いた。

しかし、アメリカのリチャード・ルボウ教授は
当時の政治状況を詳しく検証し、別の結論に至った。

アテネは当時、メロス島の対話に至る以前、
ペリクレスという有能な将軍を疫病で失っていた。
その影響もあって国内の秩序が乱れていたのだ。
ルボウの出した結論は、
この混乱こそがアテネを無用な戦争へと導いたというものだった。

 時代背景や細かい状況の違いはあるが、
現在の日本国内の政治状況においても同じことが言える。
現在の日本において見られるように、
リーダーシップの喪失、政局の混乱こそが対外戦争の危険性を大きくしているのだ。

▼国内政治が乱れているのは日本に限らない。
いつどこで紛争が勃発するかわからないほど、世界は混沌としている。

奥山

アルジェリア事件がまさにそれを象徴している。
アルジェリア事件の遠因はカダフィ政権が打倒されたことにある。
カダフィは多くの傭兵を雇っていたが、彼らはマリやニジェールの出身だった。
しかし、カダフィが死亡したことで、食いぶちを失った彼らは祖国に戻った。
それが昨年マリで起こったクーデターに繋がり、
そして今回のアルジェリア事件にまで飛び火したのだ。

良くも悪しくも、この地域の秩序はカダフィというカリスマによって守られていたということだ。

「混沌」とは、リアリズムの用語で言い換えれば「多極化」だ。
アメリカという最強国が衰退したことで、国際政治は間違いなく多極化へと向かっている。
日本は果たしてこの多極化に耐えることができるような国家たり得るか。

それが問われている。


( おくやま )

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さて、早速ですが、・ネオコンをはじめとする勢力が狙ってきた米国の世界一極覇権支配は、長くは続かない。・中国が膨張し、アジアの覇権をねらい、世界は多極構造になる。 90年代から上記のように予想し、米国内でも論争してきたのがリアリスト学派です。

リアリスト学派は、国家のパワー(軍事力、政治力、人口規模、経済力等)がもっとも大事な要素と考え、

正義やイデオロギー、理念は関係ない。国際関係はパワーで決まり、パワーを予測し戦略を立てよう

と考える学派で、19世紀の英国の行ったバランス・オブ・パワーを活用した大戦略を信条とします。

ところが「リアリスト」を自認する日本の親米保守派は、
「経済中心主義」で「安保無料(だだ)乗り」をし続けていますが、
実は、彼らは、以下の2点で決定的、かつ、致命的な誤りを犯していたのです。
そして、そうした日本の政策は、冷酷な米国のリアリストから、
単なる「バンドワゴニング」に過ぎない、と足元を見透かされているのです。

その2点とは、

(1)日本はアングロサクソン(米英)についていれば大丈夫。

(2)米国は「民主制度」と「法治」、「人権」を重んずる日本を信頼し、
   一党独裁の共産主義中国を嫌っている。

ということです。

まず、(1)については、
日英同盟時も上手くいった。だから、これからも米国についてゆけば大丈夫!
万事問題ないというものです。

しかし、我が日本が戦後60年間、幸いにして戦争に巻き込まれなかったのは、
ほとんど偶然の産物であったということは、強く認識しておく必要があります。

米国は国益に係わることならば、いとも簡単に「友達」を切り捨て、裏切る国である。
国論が変われば友好国をあっさり切り捨ててきたことは、これまでの歴史の事実が証明しています。

・日中戦争では、蒋介石を応援しつつも、途中から毛沢東支援にまわった。

・ソ連打倒のためには台湾(中華民国)を切り捨て、中華人民共和国と国交を結んだ。

・ベトナム戦争では出口がみえなくなり、結局南ベトナム支援からあっさり撤退した。

・米国が支援していた南ベトナムは崩壊し、大量の難民があふれ出た。

・イラン・イラク戦争の時、イランが戦争に勝って影響力が拡大することを恐れた米国は、
 サダムフセインに(イラク)に軍事的な支援をした。
 しかし、支援した米国は干渉してこないと思ったフセインは、その後クウェートに侵攻し、
 湾岸戦争、イラク侵攻と2度の戦争で米国に打ちのめされ、最後は米軍に捕まり処刑された。

如何でしょうか?

これでもまだあなたは、アメリカはずっと「友達」でいてくれる!

と思えますか?

次に、(2)についてですが、
欧米メディアなどの報道によれば、米国内における中国の工作員の数は激増しています。
更には、人民解放軍には「政治工作条例」なるものまであります。
彼らは世論戦、心理戦、法律戦からなる「三戦」の任務を与えられ、
まさに今、中国は国策として、米国内で「世論戦」を仕掛けている、というのが冷酷な事実です。

正義や真実でなく、ウソでも現実をつくれると考える中国の
カネも人員もかけたまさに「人海戦術」的な、この国家戦略が功を奏し、
すでに米国世論では「尖閣は日本が強奪した島だ」ということに傾き始めている・・・
この危険な状況を皆さんはご存知でしょうか?

-*- -*-

例えば、韓国との従軍慰安婦問題をみるまでもなく、
日本国内で、いわゆる「保守派」といわれる人達が、
どれだけ「真実」を主張しても、
同じ日本人であるはずの国内左翼勢力がこの外患に呼応するという、
典型的なパターンに陥っている事例は、枚挙に暇がありません。

白州次郎は「日本をプリンシプルのない国」と言いました。
しかし、残念ながら、この分析は現在の日本にも今だに当てはまっているのです。

これらの冷酷な事実を踏まえ、
本サイトで皆さんとともに真剣に考えていきたいのは、以下の2点です。

・日本はいかにして「パワー」を獲得すればいいのか?

・どんな国家像を描き、グランド・ストラテジーを立てればよいのか?

この二つの質問を念頭に据えて、米国のリアリスト思考を学び、
日本におけるリアリスト思考を広げ、リアリスト学派をつくっていく。

これが、このサイト、www.realist.jpの目的です。
あなたも是非議論に加わって下さい。



リアリスト思考を最初に日本にもたらした、
シカゴ学派、元フーバー研究所上席研究員、故・片岡鉄哉先生に捧ぐ

日本がこのままの状態でいけば、
少なくとも十年以内に、二流、三流の地位まで確実に堕ちていくことになる。
現在の日本の状況を冷静に見れば、
どう考えてもそういう結論しか出てこないのだ。
しかし、日本はそのまま堕ちっぱなしというわけではない。

何年後になるかわからないが、日本はしぶとく復活するはずである。
国家というのはいつまでも堕ちっぱなしということはなく、
反省して自覚した国民が生まれ、それが国を復興することになるからである。

そのときに、決定的に必要となつてくるのが「理想」である。

地政学の祖であるマッキンダーは、
「人類を導くことができるのは、ただ理想の持つ魅力だけだ」
と言っている。

しかし彼は、同時に現実を冷静に見る目を
忘れてはならないことを鋭く警告している。
それが地理と歴史を冷静に分析した、
地政学という学問が与えてくれる視点なのである。
彼が一九一九年に発表した『デモクラシーの理想と現実』
という本の題名は、このような理想と現実のバランスの大切さを訴えている。

世界はこれから「カオス化」していく。
これはつまり、世界はこれからますます複雑化した
先の見えない場になるということである。

そして日本は、「カオス化」された状況の中で
自立を目指さなければならないし、
むしろ自立せざるを得ない状況に追い込まれることになるかもしれない。
そして、その中で世界に伍していくためには、
日本人は何よりもまず、リアリズムの思考法を身につけなければならない。

日本人は自分で責任を持って戦略を考えるという思考を捨ててしまい、
安易に平和的な解決だけを求めるという体質が染みついてしまった。
たとえば、外交における戦略も「善か悪か」で判断するため、
善を探そうとするあまり、次の一手がどうしても遅くなる。

しかも、日本が「善かれ」と思って世界に主張したことは、
まずもって善として見られていない。
他国はリアリズムの視点で「日本が何を狙っているのか」
と冷酷に見ているのだ。
だからこそ、わが国も外交戦略を「善悪」ではなく、
「強弱」で見るように訓練しなければならない。
「強弱」とは、現在わが国にとって、
この政策は他国と比べて立場を強めてくれるのか
弱めるものかという冷静な判断である。

弱いのであれば、より強い政策を打ち出さなければならないし、
強いものであれば、政策をより国益に近づけなければならない。
こうしたリアリズムの思考を身につけることは、
むしろ「国際的なマナー」なのである。