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奥山真司の未来予測と戦略CD

翻訳者:奥山真司による
『The Fourth Turning』解説(その4)

これまで、世代、自然、人生、さらには時代(の雰囲気)にまで、
4つのタイプがあることを説明してきたわけですが、
ハウとストラウスの最大の特徴は、これらをすべて統合して、
自分たちの理論をつくっているのです。

その最大のカギが、特定の「世代」(ジェネレーション)が
なぜ生まれるのかという説明でして、
これがわかるとその理論の全体構造が見えてきます。

まず前回までに、時代には春夏秋冬があり、これが20年ごとに4回訪れる、
その一サイクル(サエクルム)が80年ほどになると説明したわけですが、
この時代の春夏秋冬が、各世代(預言者、遊牧民、英雄、芸術家)の
特徴を形成する役割を果たしている、というところがミソです。

では具体例から見ていきましょう。

シンプルに説明するために、とりあえずここでは
最初の世代である「預言者」だけを参照してみたいと思います。

▼預言者の例

ハウとストラウスによれば、預言者たちは、
春の時代に生まれて幼年期(0~20歳)を過ごします。

ちなみに現在生きている預言者といえば、
日本でいえば圧倒的な数を誇る「団塊の世代」、
アメリカでもベビーブーマでありまして、
まさに歴史上の「春」である1946~64年の間に
生まれた世代ということになります。

彼らは戦後(つまり冬の後)の秩序が入れ替わった「春」の時代に生まれ、
いわゆる「戦争を知らない子供たち」としてすくすくと育ちます。
もちろん最も影響を受けたのは「戦後の復興の雰囲気」でありまして、
比較的高揚感のある時代に育つわけですから、
必然的にナルシストになりやすいといわれております。

そんな彼らが大学生くらいの年(20歳~)になると、
時代の季節も「夏」に入ります。
アメリカではこの頃からヒッピー文化やカウンターカルチャーなどが吹き荒れ、
日本でも学生運動などが始まり、社会的にやや荒れてくる時代でもあります。
1964~84年がこの時期にあたります。

ところが団塊の彼らも、いい加減大人になり(40歳~)、
社会の中の中枢を担うようになります。
その頃には時代は秋(1984-2004年)に入り、
日本ではバブルとバブル崩壊が始まることになります。

そしてその団塊の彼らが社会的にはリタイアしはじめ、
老人となりはじめた(60歳~)のがおよそ10年前くらいからです。
これが冬の時代であり、2005~25年くらいまで続く、というのです。

さて、ここまで預言者である
「団塊の世代」(ベビーブーマー)たちを例にとって、
彼らが人生の四季をそれぞれ過ごしてきたことを説明してきました。

さらにその下の「遊牧民」の人生の四季も同じようにたどってみます。

▼遊牧民の例

ハウとストラウスによれば、遊牧民たちは、
夏の時代に生まれて幼年期(0~20歳)を過ごします。

ちなみに現在生きている遊牧民といえば、
日本でいえば「団塊ジュニアの世代」、
アメリカでは「ジェネレーションx」などと呼ばれておりまして
歴史上の「夏」である1964~84年の間に生まれた世代
ということになります。

つまりすぐ上の世代は「団塊」でありまして、
戦後の秩序が入れ替わった「春」が終わり、
その秩序が試される「夏」の時代に生まれ、
忙しい親たちからあまり保護を受けずにないがしろにされて育ちます。

もちろん最も影響を受けたのは「
勢いはあるが荒れた社会」でありまして、
校内暴力なども多かった時代のため、
他の世代よりも個人的で生き抜く
サバイバル技術を持っているといわれております。

そんな彼らが大学生くらいの年(20歳~)になると、
時代の季節も「秋」に入ります。アメリカや日本では
この頃(1984~2005年)からバブルとその崩壊やIT革命が起こり、
とりわけ日本の場合は「就職氷河期」に突入します。
「金の卵」と言われて集団就職できた一つ上の世代とは大違いです。

このようなサバイバル技術を身に着けた彼らが大人になり(40歳~)、
社会の中の中枢を担うようになると、とたんに危機が始まります。
その頃には時代は冬(2005~25年)に入るからです。

その後はどうなるかはわかりませんが、
彼らが社会的にはリタイアしはじめ、老人となりはじめる(60歳~)くらいには
危機の時代となる冬が過ぎ去り、
新たな春が2025年くらいから始まるのではないか、
というのがハウとストラウスの推測です。

※※※

さて、この二つの世代の説明で、
なぜ各世代が独自の特徴を持つようになるのかが
おわかりいただけたでしょうか?

預言者も遊牧民も、そして英雄も芸術家も、
それぞれが特定の時代の季節(春夏秋冬)の流れの中で
生まれてしまったがために、その季節の影響を
(とりわけその幼年期に)モロにかぶることによって
独特の世界観を身に着け、他の世代とは
明らかに異なる行動様式を持つようになる、というのです。

ハウとストラウスは、このような世代の歩みは
ほぼ80年ごとにまったく同じパターンで進行する
としているわけですが、その様子を簡略化したのが以下の図です。

奥山真司の未来予測と戦略CD

そしてこの図の中で注目していただきたいのは、
預言者、遊牧民、英雄、芸術家という4タイプの世代が、
時代の季節ごとに組み合わせを変えている、という点です。

そしてハウとストラウスは、
とりわけ預言者の世代が老年期(60歳~)に入り、
英雄の世代が若い成人期(20~40歳)に入る、
いわば「冬」の時代に、社会は大改革を迎えるというのです。

では80年前、そしてそのさらに80年前(160年前)に
日本はどのような状況にあったでしょうか?

そうです、それは第二次世界大戦と明治維新だったのです。

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奥山真司による『The Fourth Turning』解説(その1)

奥山真司による『The Fourth Turning』解説(その2)

奥山真司による『The Fourth Turning』解説(その3)

奥山真司による『The Fourth Turning』解説(その4)

奥山真司の未来予測と戦略CD